ひろゆき氏を論破した言語学者 在仏50年超の“F爺”小島剛一氏が語る日本人差別

国内 社会 2021年8月6日掲載

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差別に気づかない場面

小島:フランス語は、私にとっては第一言語です。第一言語とは「母言語同様に、文法を意識することなく自由に思考の手段として用いることのできる言語」という意味です。私は英語やトルコ語、トルコ語の方言、少数民族の諸言語など、様々な異言語を習得してきました。フランス語が第一言語となるのに、フランスに到着してから約1年かかりました。日本で生まれ育って大人になってからフランスに移住した日本人としては、私の知っている範囲では、もっとも早い記録です。

 フランス語とフランスの風習が分からない人は、フランス語で差別されても分かりません。私にも経験があります。ブログにも書きましたが、フランスで生活をするようになって半年が過ぎた頃のことでした。街を歩いていると、6~7歳の男の子が2人、私の前に走り寄ってきて、両手を自分の目に当てて左右に引く動作を繰り返しました。

 歩くのに邪魔だと思いましたが、その動作が極東人差別を意味するという知識はありませんでした。子どもたちがいなくなると、一緒にいたフランス人の女性が怒りだして不思議に思い、理由を教えてもらって驚きました。「切れ長の目」を真似することがアジア人差別につながるということを、その時初めて私は学んだのです。

 私はフランスで働き、生活の糧を得てきました。極貧だった時期もあります。その頃は、市場で野菜を買うのにも、捨て値でもいいから売ってしまいたい様子の店で値切らなければなりませんでした。ありとあらゆる場面で、フランス語で意思疎通を行ってきました。差別されたことは何千回もあります。その経験から、今回の差別動画について発言しています。

若者言葉の嘘

小島:翻って、ひろゆき氏はどうでしょうか。氏はフランスに住んでいるのかもしれませんが、フランスで働いているわけではなさそうです。生活の原資は主に、日本での活動で得ているのでしょう。日々、どれくらいの頻度でフランス人と会話をしているのでしょうか。

 買い物でも、スーパーなら店員と話をする必要はありません。タクシーに乗る時でも、行き先は紙に書いたり、スマホに表示させたりすれば行ってくれます。お金さえあれば、フランス語が全くできなくとも、フランスでの生活は可能です。

 ひろゆき氏は相当に裕福な方だと聞いています。どこの国の人でも、金持ちには優しいでしょう。私は八百屋以外の商店でも、値切ろうとしたわけでもないのに、店員に人種差別的な嫌味を言われた経験がたくさんあります。一方のひろゆき氏は、パリで「この国が気に入らないんだったら、さっさと自分の国に帰れ」など、外国人差別・人種差別の痛罵を浴びせかけられた経験はお持ちなのでしょうか。

 氏がパリに建つアパートの一室に住んでいるのは事実なのかもしれません。しかし、それはフランス語を使ってフランスで働き、フランスで生計を立てているのとは違います。結局、ひろゆき氏は北海道や沖縄で暮らしているのと大差はないのです。

《ひろゆき氏は更に反論を続けた。Twitterで「putain」について、若者言葉では強調の意味に使うと主張。「若者言葉を知らない高齢者の方が『聞いたことが無いからフランス人は使わない』というのは勉強不足なだけだと思います」と投稿した。他にも動画などで反論を繰り返した》

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