なでしこは当然の敗北 疑問の多い高倉采配 次は“ハンス・オフト”が必要な理由

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“満を持して”の交代

 その際にJFA関係者は佐々木監督の後継者として高倉の名をあげ、「日本の切り札なので、キャリアに傷をつけるようなことがあってはならない」と話していた。

「キャリアに傷」とは、08年北京五輪4位、11年ドイツW杯優勝、12年ロンドン五輪銀メダル、15年カナダW杯準優勝と数々の栄冠を勝ち取った佐々木監督だが、世代交代がうまく進まず(東アジアカップでは中島依美[30]、田中美南[27]、山下杏也加[25]、菅澤優衣香[30]らが台頭)、リオ五輪の予選突破が危ぶまれていたことだ。

 佐々木監督から高倉監督にバトンタッチしてリオ五輪予選で敗退したら、「やはり佐々木監督でないとダメだ」となってしまう可能性がある。そこでリオ五輪の最終予選は佐々木監督で臨んだが、初戦のオーストラリアに1-3で敗れると、中国にも1-2と敗退し、3位で五輪の出場権を逃してしまった。

 こうして“満を持して”就任した高倉監督だったが、日本で開催された17年のEAFF東アジアカップは準優勝、2年後の同大会は優勝したが、19年フランスW杯は決勝トーナメント1回戦で敗退した。

 過去の男子の代表監督は外国人ということもあり、大会か年数によって契約を見直すケースが多かった。「結果と内容を問う」ためだ。

日本人監督は疑問

 しかし高倉監督には暗黙のうちに「東京五輪まで」との了解があったようだ。これが自国開催の五輪でなければ“予選”というハードルがあったため、よりシビアな評価につながったかもしれない。

 予選免除ということで「メダルへの期待感」ばかりが膨らみ、監督の評価は二の次になってしまったと言わざるを得ない。

 すでに高倉監督は辞意を表明し、後任監督にはU-19日本代表監督の池田太氏(50)の名前があがっているという。

 池田氏の手腕は知らないが、個人的には反対だ。チリ戦後にも書いたが、世界のサッカーに精通している外国人監督を招聘するべきだと思うからだ。例えば、元アメリカ代表監督で今回はブラジルを率いたピア・スンドハーゲ(61)は、日本のサッカーにも精通しているだけに適任だと思う。

 93年にJリーグが誕生した際、日本代表も初の外国人監督であるハンス・オフト(74)を招き、相乗効果で日本サッカーは進歩した。秋に開幕を控えるWEリーグだけに、同じようなベクトルで強化を進めてはいかがだろうか。

“ところてん人事”の弊害

 そしてもう1点、これまで「なでしこジャパン」の監督は、JFA(日本サッカー協会)の強化・技術委員が務めてきた。一方、サムライブルーの日本人監督は、森保一(52)、西野朗(66)、岡田武史(64。南アW杯時代)らJリーグで結果を残した監督が代表監督に就任している。それだけ現場で“修羅場”を経験しているからだ。

 しかしながら「なでしこジャパン」の監督に、なでしこリーグで結果を残した監督が抜擢された例は一度もない。言葉は悪いが「JFAのエリートで温室育ち」の監督に“戦えるチーム”作りができるのか疑問である。

 次期監督候補を選ぶ前に、まずは東京五輪と高倉ジャパンの5年間を検証することが先で、後任監督はそれを踏まえて最適な人選をすべきだろう。“ところてん式”の監督人事はいいかげん止めて欲しい。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年8月1日掲載

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