「差し上げましょうか?」ふかわりょうが感動した、黒木瞳から届いたプレゼントとは

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出演オファーの常套句「本人も、とても関心を持っているようで」

 ふかわりょうが刊行したエッセイ集『世の中と足並みがそろわない』(新潮社)は、発売日に即重版するなど話題に。その後、ラジオ番組でパーソナリティーを務める黒木瞳さんと意気投合。なぜか歯磨きの話になり――。

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「小包みが事務所に届いたので、本日、お持ちします」

 マネージャーからの連絡。楽屋に入ると、テーブルの上に赤い箱が置かれています。何重にも巻かれた緩衝材を剥がすと、さらに現れる小さな箱。紙の蓋をそっと開けると、そこにはかぐや姫のように可憐な透明のガラスがありました。

「本人も、とても関心を持っているようで」

 この表現ほど私が警戒するフレーズはありません。出演オファーの際に発する、番組スタッフの常套句。これを鵜呑みにして何度も痛い目に遭いました。いざ現場に足を運んでみれば、「本人」は関心どころか、とても冷めている。話が違う。そして、目が死んだ人に話す苦しみを抜け、思うのです。信じるんじゃなかった。「本人は関心ないのですが、番組としては出ていただきたいので」と正直に言えないのはわかります。しかし、キャスティングが大変だからといって、そんな嘘を言わなくていいのに。

見事なまでに付箋だらけの本

 逆の場合もあります。私がラジオのレギュラー番組をやっていた際、レコード会社のプロモーターがやってきて言うのです。「本人も出たがっているので」。いざ「本人」をお呼びしてみれば、なかなかのツンとした態度。「私、こんなど深夜のラジオ番組、出たくないんだけど」と顔に書いてあります。出たがっているなんてとんでもない。「本人」ではなく、宣伝担当が出したい、いや厳密にいうと、仕事している感を出したいだけ。だから、このフレーズを耳にすると、ハリネズミのように針をわさっと広げてしまうのです。

「本人も、とても関心を持っているようで」

 マネージャーを介して伝えられた「本人」とは、番組パーソナリティーのこと。この言葉がなければすんなり受け入れられたかもしれないのに。ハリネズミのように、私の心の針が一瞬にして逆立ちました。傷つきたくないから断るべきだろうか。でも、本のプロモーションにもなるし。

「よろしくお願いします」

 私は、覚悟を決めました。腹を括りました。勝手に期待するのこそ良くない。本のプロモーションのためなら、関心がない人にこそ伝えるべきだろう。なにせ、今回、パーソナリティーを務めるのは、日本を代表する女優。私に興味があるわけがない。いくら冷めた視線を向けられても怯まず、ただ、書籍のお話ができればいい。滝行のように、冷めた視線を浴びても耐えればいい。始まれば、いつか終わるさ。そんな気持ちで迎える収録。ラジオ局の地下にある、普段は演奏会などで使用されるような広いスタジオに案内されると、ソーシャル・ディスタンスが保たれたラジオ・ブースで私を待っていたのは、スクリーンで見たままの美しい女性と、見事なまでに付箋だらけの本でした。

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