なでしこチリに苦戦 “デュエル”の意識に乏しい高倉監督 次は外国人監督の必要性

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危機的な「なでしこ」

 そのために組織力で戦うことを選択したが、元日本代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチ氏(69)は通説を覆し、日本人にも「デュエル」を求めた。「球際での強さ」である。同じことはアルベルト・ザッケローニ元監督(68)もフィジカルコンタクトの際に「インテンシティ(強度)」の重要性を説いた。

 その影響で、酒井宏樹(31)や遠藤航(28)に象徴されるように、ヨーロッパのリーグ戦でもデュエルで互角以上に戦える選手が出てきた。

 しかし、今回のなでしこジャパンでは6人の選手がヨーロッパやアメリカでプレーしているものの、試合を見る限り「デュエル」を発揮しているとは思えない。

「デュエル」や「インテンシティ」を外国人監督が求めたのは、彼らがヨーロッパのスタンダードを知っていたからだ。それに比べて日本の選手は劣っているため必要性を説いた。それでも身につけるまでにはかなりの時間を要した。

 こちらはプロリーグ(WEリーグ)が誕生したからといって、すぐに向上するとは思えない。次期なでしこジャパンの監督には、ヨーロッパのスタンダードを知っている外国人監督を招聘しないと、彼我の差は開くばかりだろう。その危機感を技術委員会には感じて欲しい。

林穂之香が必要

 試合は後半24分にカウンターから最後はMFヤナラ・アエド(28)のオーバーヘッドのパスをMFフランシスカ・ララ(31)がヘディングシュート。これがクロスバーに当たり、バウンドしたところをGK山下杏也加(25)がキャッチした。微妙なプレーだっただけに、VARが介入しないで安堵したのは私だけではないだろう。

 そして、後半開始から投入されたFW田中美南(27)は、すぐさま立て続けに2本のシュートを放つなどストライカーとしての本領を発揮し、32分にはFW岩渕のポストプレーからのタテパスを冷静に蹴り込んで決勝点をマークした。

 岩渕からのパスに、普通なら焦りから早くシュートを打ちたくなるところ、「GKの動きを最後まで見たので」と言ったように、自分のタイミングで打てるようコンマ何秒の差ではあるがステップを調整してGKの右脇下を抜いた。ストライカーらしい一撃だった。

 この勝利により日本は3位でグループリーグを通過しベスト8に進出。次の相手(7月30日)はFIFAランク5位でリオ五輪銀メダル(金メダルは今回予選落ちしたドイツ)、さらに今回の五輪初戦で“女王”アメリカを3-0で粉砕したスウェーデンだ。

 グループリーグを3連勝で突破した唯一のチームであり、優勝候補の筆頭とも言える。トーナメントは一発勝負だけに何が起こるか分からないが、せめて高倉麻子監督(53)には、スタメンのFWに田中を、ボランチには豊富な運動量を誇る林穂之香(23)を起用して欲しい。

PK戦狙いの戦略も

 そして膝の回復次第だが、岩渕をスーパーサブとしてベンチに置くなら、右MFに塩越柚歩(23)を、2トップには長谷川唯(24)というのがこれまでの3試合を見る限り、ベストメンバーと言えるのではないだろうか。もちろんドン引きで、PK戦狙いという采配も悪い選択肢ではない。高倉監督のゲームプランが楽しみな試合でもある。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月30日掲載

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