小池都知事の肝入り「2階建て電車」は黒歴史に…満員電車ゼロは永遠に達成できない

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もっとも混むのは「日暮里・舎人ライナー」のなぜ

 コロナによって混雑が緩和したことは、数字からも確認できる。今年7月9日に国土交通省は2020年度における各線の混雑率を発表。

 混雑路線の代表格だった東西線は、最ピーク時の乗車率が180パーセント超も珍しくなかったが2020年度は123パーセントまで低下。そのほか、東京圏の各路線は100パーセント前後にまで下がり、なかには100パーセントを切る路線も目立つ。

 都市圏の混雑率は軒並み低下した中、2020年度において東京圏でもっとも混雑が激しい路線になったのは、東京都交通局が運行する日暮里・舎人ライナーだった。日暮里・舎人ライナーの赤土小学校前駅から西日暮里駅の区間は、混雑率が140パーセント。

 コロナ前まで同区間の混雑率は180パーセント前後だったから、それを考慮すれば改善の気配は見られる。しかし、満員電車ゼロを呼びかける小池都知事の足元ともいえる路線が、東京圏のみならず名古屋・大阪といった三大都市圏で混雑率ワーストワンという不名誉な称号を得てしまった。小池都知事に悩ましい話だろう。

 日暮里・舎人ライナーは、荒川区の日暮里駅と足立区の見沼代親水公園駅とを結ぶ路線で2008年に開業した。東京23区でも、それほど沿線人口が多いエリアではない。それにもかかわらず、どうして日暮里・舎人ライナーが混雑するのか? 

 当初、日暮里・舎人ライナーは地元住民が生活の足として使うことが想定されていた。ところが開業前後から沿線の宅地化が急激に進み、都心部に通勤するニューファミリー層が多く住むようになった。同線の通勤需要は朝の通勤ラッシュ時に限定されるため、朝だけ混雑するという現象が起きた。

 東京都が莫大な予算を投じて列車の長大編成化や駅ホームの延長といったインフラの改良に乗り出すことは容易ではない。ましてや、混雑するのは朝のラッシュ時に限定されるわけだから、インフラ改良は過大投資になりかねない。

 そのため、日暮里・舎人ライナーはインフラ改良ではなく東西線と同様に早起きキャンペーンを実施して混雑の分散を図った。しかし、それでは劇的な改善は見込めない。そうした理由から、日暮里・舎人ライナーでは定員の多いロングシート車両へと順次切り替えていくことで対応する。

 とにもかくにも、コロナによって鉄道各線の混雑率が下がったわけだが、リモートワークに取り組んできた企業も少しずつ出社勤務へ戻そうとしている。

 ようやく満員電車がなくなりそうになってきたというのに、再び満員電車の日常が戻ってくる。

 これでは満員電車ゼロは永遠に達成できそうにない。満員電車は、日本社会の宿痾なのかもしれない。

小川裕夫/フリーランスライター

デイリー新潮取材班編集

2021年7月28日掲載

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