コロナ禍の子育てで注意すべきことは 否定言葉に要注意、家の近所でもできることは?

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否定言葉に要注意

 あるいは、親がゲームより楽しい遊びを提案して一緒に遊んでみてはどうでしょう。今こそレトロなゲームの出番だと思っています。ボードゲームやオセロ、紙と鉛筆があればできる「三角取り」という遊びもあります。正月遊びもそう。コマ、羽根つき、凧揚げ、福笑い、双六。今の子は正月遊びをしないとよく言われますが、しないのではなく与えていないのです。与えたら飛びつきますよ。

〈もっとも、そうした遊びを「家族以外」とする場合はマスクが必要になろう。原坂氏は、コロナ禍で子供への悪影響が最も大きいのは「マスク生活」だと指摘する。〉

 子供は、大人の笑顔が大好きなのですが、マスクをしているとそれが見えません。子供たちはとくに親の笑顔が好きです。だから、テレビで面白いことをやっていたら、振り向いて台所のママも笑っているか確認するのです。どうしてか。笑顔を見たいからです。

 そこで、こんなテーマ。「マスク姿でも子供に笑顔を見てもらう方法」。キーワードは言葉がけです。子供は想像力が豊かなので、優しい言葉がけをするだけで、もう笑顔を想像するのです。「笑顔色の言葉がけ」と僕は言っています。例えば、マスクで口元を覆って「○○!」と名前を呼べば、子供は鬼のような顔を想像する。「○○ちゃん♪」、と呼べば笑顔に見える。まさに笑顔色の声。

 マスクのあるなしにかかわらず言葉がけは大事です。でも多くの親は「違うでしょ!」「ダメでしょ!」といった否定言葉が多い。否定言葉は笑顔では言えませんよね。

 一番伝えたいのは、何度も言うように、子供のことは認める、否定しないということ。普段大人は、気づかないうちに子供を否定しまくっています。例えば子供が転んで「痛い!」と言ったら「痛くない痛くない」。これ否定です。散歩に行った時「お母さん暑い!」と言っただけで、「3枚も着てるからでしょ!」。これも否定です。「おなか痛い~」「あんなに食べるからでしょ!」。否定ばっかりで、認め言葉がないんです。子供の言葉にはオウム返しをお勧めします。「おなか痛い~」ときたら「あぁ、おなか痛いの」と言ってから「もうあんなに食べたらダメだよ」。ダメ出し言葉を2番目に言うのです。

 ちなみに、子供はよく泣くと言われますが、実は2歳を超えるとあまり泣かなくなるということをご存じでしょうか。2歳を過ぎても泣くのは、次の四つがある時です。「痛み」「不安」「恐怖感」、そしてあと一つが「大人からの否定言葉」。たとえば「もう連れて行かない!」「もうずっとそこにいなさい!」なんて言うとすぐに泣きます。そこに痛みも不安もないはずなのに子供が泣いているときは、親が泣かせていることがとても多いものです。一度注意してみて下さい。

 あと、いきなり叱り口調になっていないかも確認してほしいと思います。子供に何かを言う時、「ちょっとお!」「何してんの!」といきなり叱っている親が多くいます。僕は保育士だった時、子供に「5回目から怖いよ」と言っていました。例えば3回目まで優しく言って、次に「はい、4回目ですよ」と言うと、子供は自発的に動き始めたりします。特に優しい言い方でなくっても、普通の言い方で大丈夫。「これ片付けようね」「遊ぶのはおしまい」、それで十分です。

家の近所で思い出作り

 イソップ寓話「北風と太陽」を読むと、みんな「優しさが一番、無理やりはダメだよね」と言うのに、なぜか子供には北風式になってしまう。太陽式は時間と手間がかかり、北風式は手っ取り早くて即効性があるからです。しかしそれは長い目で見れば、反発心を起こさせ、思春期に爆発したりします。ストレスがどんどんたまっていくのです、そういう接し方は。

 虐待された子供は「自分は親に嫌われている」「嫌いだから怒られるんだ」と思い込むケースが多い。子供は親によく怒られると、嫌われている、と思ってしまうのです。

 でも、どんなお母さんも基本的には子供を愛しています。だから僕は「怒る時は抱っこして怒れ」と親に言っています。それなら自分が感情的になっていないか客観的に見えるし、子供には「基本的には愛されている」という安心感を与えることができますから。

〈親子間において大事な触れ合い。コロナ前には「おじいちゃん」「おばあちゃん」と触れ合う機会もよくあったはずだが、今ではほとんど会えていないという家庭も多いだろう。〉

 子供には祖父母のことを忘れてほしくないし、祖父母の側も孫が動いている姿を見て声を聞けば安心します。そこで、週に1回、1回1分でいいから、LINEのテレビ電話機能を使って話させてみて下さい。Zoomは大変そうだからLINEで。僕も2歳の孫がいるのでやっています。時間は1分でもいいし10分でもいい。10分と1分は変わりませんが、1分と0分では大違いなのです。

 孫の側が「先週も話したよ」とならないように、その1分が楽しみになる、飽きさせないようにする工夫が必要です。画面の中で手を振り合う、何か面白いものを見せ合う。電話した後は「おやつタイム」が待っている、というのもアリです。子供はクイズが大好きなので、クイズ合戦をしてみてもいい。孫に会うことに飢えている「おじいちゃん」「おばあちゃん」はぜひテレビ電話をやってみてほしい。会いたい気持ちが満たされるはずです。

〈祖父母との接触だけではなく、コロナ禍以後は「旅行などのイベント」に出かける機会も減った。「思い出作りが出来ない」と悩んでいる親に対して、原坂氏はこう提案する。〉

 子供との思い出作りは家から徒歩10分圏内でもたくさんできます。5分のところにある公園でもできます。大好きなパパやママと砂場でプリンを作った、山を作った。そういうことは一生覚えています。お金をかけたかどうかは関係ない。箱根に連れていったことは全然覚えていないのに、近所の公園でお母さんとかけっこしたのはよく覚えている、といったことはよくあるのです。

 また、運動不足解消も兼ねて、近所を散歩するのもいい。スーパーへの往復10分を一生忘れないゴールデンタイムにすることもできます。お母さんと晩御飯の当てっこをしたなぁ。途中で一緒に花を探したなぁ。そんな思い出が残る楽しい道中にするのです。

 親次第でコロナ時代が楽しい思い出になるとはそういうことです。僕は子供と10分一緒に歩いたら、100回は笑わせられますよ。例えば、突然、「走れ!」と言って手をつないだまま数メートル走る。歩きながら、つないだその手を大きく振る。そういう些細なことでも子供はすぐに笑います。

 僕は「子供時代の10年間で10万回笑わせましょう」と言っています。計算すると1日30回でいいのです。親が子供を笑わせる。場合によっては子供と一緒に風呂に入るだけでクリアしている人もいます。10万回笑ったというのは、10万回幸せを感じたということ。子供時代に10万回幸せを感じた人は絶対良い人になるはずです。

原坂一郎(はらさかいちろう)
こどもコンサルタント。兵庫県神戸市で23年にわたって保育所に勤務した後、2004年、こどもコンサルタントに。子供及び子育てに関するさまざまな研究や講演活動を全国で展開している。家庭では2男1女の父。

週刊新潮 2021年7月22日号掲載

特集「コロナ禍の『親子問題』第3弾 小中高生の『自殺』過去最多 ギスギス関係の修復法」より

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