優勝候補の米子松蔭“出場辞退”で批判殺到 コロナ禍で露呈した高野連の「機能不全」

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「野球を通じた人間教育」

 そして、昨年から続くコロナ禍においては、これまでの常識では考えられない事態が起こることは当然で、その対処のためには強烈なリーダーシップが必要なはずだが、そんな様子が見られないのは、残念なことである。これでは「機能不全」と言われても弁明できないのではないだろうか。

 安全に大会を運営することが最重要なのは間違いないが、この大会に懸けて日々練習してきた選手のことを考えれば、もう少し柔軟な対応を行うべきではないだろうか。

 大きな救いは、今回の騒動が当事者である選手が声を上げたことによって広がったという点だ。米子松蔭の出場辞退が発表された後、野球部の主将と見られるツイッターアカウントが今回の決定に疑問を呈するツイートを表明し、そこからあらゆる動きが見られている。

 19日の午前中現在では、決定が覆るなどの情報は入ってきていないが、大人の下した決定に黙って従うのではなく、自分で考えて行動し、そこから世論を動かしたというのは立派である。

 高校野球では「野球を通じた人間教育」という言葉をよく聞くが、このような行動こそが称賛されるべきだろう。今後も野球に限らず、あらゆる学生スポーツにおいて、主役である選手の意思が尊重され、米子松蔭の主将のように考えて行動できる選手が一人でも多く出てくることを望みたい。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年7月19日掲載

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