「熱海土石流」盛り土業者「小田原城史跡」の土地を1億3000万円で市に転売でボロ儲けの手口

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利益は最大で8000万円

 こうしてA氏は供託金という僅かな元手でこの土地を転がし、大金をせしめることに成功したのだ。この土地はそれから半年後の12年4月に、小田原市土地開発公社がY社から買い取り、最終的には小田原市が公社から買い取った。市の買い取り価格は約1億3000万円。この金額で市に買い取ってもらえる算段があったからこそ、B氏はA氏から落札価格よりも高値で土地を買い取ったのであろう。では、2人はこの取引でどのくらいの額を稼いだのだろうか。

 競売を行った横浜地方裁判所小田原支部に落札価格を問い合わせたが、「保存期間の5年を経過しており、資料は破棄されている」とのことで確認できなかった。当事者らに問い合わせたが返答なし。だが、ネット上に残されていたこの物件の競売情報を見ると、売却基準価格は4951万円とあった。最低入札価格は売却基準価格の8割と定められている。最大で2人は、この土地転がしで約8000万円もの利ざやを得た可能性があるのだ。どう分けたかは2人のみぞ知るところである。

 何とも怪しいこの土地転がしだが、彼らの取引は堂々と裁判所を介して行われており、違法性は見当たらない。とはいえ、もとを辿れば我々の税金だ。国指定史跡となる土地の購入代金の8割は国からの補助金が充てられるので、小田原市民に限った話ではない。

誰が損をしたのか

 市は「鑑定士に依頼し、内部で決裁した上で適正な価格が算定されています。それ以前の転売の経緯については関知しないことになっています」と答える。A氏らのために高く買い取ったわけではないとの主張だ。確かに割を食ったのは、この物件を競売にかけた債権者なのかもしれない。だが、前出の不動産業者は「結果的には、市はA氏のカネ儲けに加担したと言える」と指摘する。

「こんなスピードで市を思い通りに操るなんて、普通の業社には絶対にできません。市からA氏に情報が流れていた可能性は高い。こういう土地に手を出せば、1、2年土地を寝かしてしまうこともざらにあるのです。A氏は、兄が市の都市開発部に勤務していた関係で、市には食い込んでいたと聞いています。同和団体幹部の肩書も利用したのではないか」

 悲しいのは、A氏に丸儲けを許しながらも、9年経った今も、この土地が「国指定史跡」とは思えない状態で放置されたままなことだ。市は「将来的には、隣接する八幡山古郭曲輪とつなぎ、整備していく構想はありますが、他の地権者との話し合いが進んでいません」と話す。

 熱海の盛り土同様、A氏はこのような強引な手法で、土地をカネに変えて生きてきたのである。

デイリー新潮取材班

2021年7月19日掲載

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