「熱海土石流」盛り土業者「小田原城史跡」の土地を1億3000万円で市に転売でボロ儲けの手口

国内 社会 2021年7月19日掲載

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 熱海で発生した大規模土石流の原因となったとされる盛り土。その工事を行った業者として責任を問われているのが、神奈川県小田原市の不動産業者X社である。X社代表のA氏は地元・小田原でも、同和団体代表の名刺を持ち、いわくつきの競売物件を扱う業者として有名だった。10年前には「小田原城史跡」に指定されそうな土地をめざとく競売で落札。市に転売し、“濡れ手に粟”の利益を得ていた。

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戦国時代の遺構が眠る街

 戦国時代、北条氏の本拠地だった小田原城。「小田原城址公園」があるJR小田原駅周辺は、いまは商店街や住宅地となっているが、地下には当時の遺構が眠っているとされている。

 東口から徒歩8分。急な坂道が続く住宅街の一角に、雑草が生い茂る空き地があった。ここは、城址公園と線路を挟んで反対側にそびえる八幡山と呼ばれる区域で、埋蔵文化財包蔵地に指定されている。後北条家の開祖・北条早雲の時代は、このあたりが城の中心地だったという。

 土地の広さは約1200平方メートル。所有者は小田原市だ。はたから見ると、ただの空き地にしか見えないが、市によれば、

「2011年に市が行った試掘で、横3メートル、深さが最大10メートルに及ぶ『障子堀』という小田原城の遺構が発見されました。そのため、市が12年に所有者から購入し、現在も保存しております。同年、国指定史跡にも指定されています」(文化部文化財課)

隣接する土地で起きていたマンション建設反対運動

 登記簿謄本によれば、この土地は02年に東京の不動産会社が前所有者から購入したもので、2軒の民家が建てられていた。だが、10年5月に債権回収会社によって差押えられ、横浜地方裁判所小田原支部で競売にかけられることになった。

 競売が成立したのは、翌11年9月のこと。地元不動産業者は「3度目の競売でようやく買手がついたと聞いている」と振り返る。なぜ、なかなか買手がつかなかったのか。そのワケは、この土地に隣接する「八幡山古郭曲輪」と呼ばれる史跡で起きた騒ぎを振り返れば、すぐにわかることだ。下記はそれを伝える新聞記事である。

〈小田原城天守閣の近く(小田原市城山3)に天守閣を超える高さのマンションが計画されている問題で13日、地元の自治会や歴史研究会などが結成した「『歴史のまち小田原』を創(つく)る市民協議会」が市役所周辺で建設反対と計画地買収を市に求めるデモをした。「小田原城が泣いている」、「負の遺産を子孫に残すな」と書いたプラカードを手にした約40人が、「天守閣を見下ろすマンションはいらない」と訴え、約800メートルを歩いた〉(毎日新聞・05年5月14日掲載「小田原城前のマンション計画:市民協がデモ 建設反対など市に求め」)

 04年にこの土地を取得した業者が、市に13階建のマンション建設計画を提出したところ、地元で激しい建設反対運動が起きたのだ。市と業者の話し合いはもつれにもつれたが、結局、業者が折れ、05年6月に開発を断念。市が6億2000万円で土地を買い取ることで決着がついた。この騒ぎの最中、市が発掘調査を行ったところ、戦国時代の方形竪穴状遺構や掘立柱建物跡が発見された。06年、この土地は国指定史跡に指定され、10年に歴史公園として整備され、現在に至っている。

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