「匠大塚」はコロナでも出店ラッシュ ブレない父・勝久氏と久美子氏の大きな違い

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 大塚家具の創業者である大塚勝久氏が率いる匠大塚が、池袋の東武百貨店に出店することが発表された。コロナ禍の今、なぜ? と思いきや、実は昨年からデパートへ進出し、これが4店目になる。敢えてこの時期に新規の店舗を作る勝久氏の戦略とは? そして大塚家具社長を辞任した娘・久美子氏との違いとは?

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 匠大塚は、昨年7月に東急百貨店吉祥寺店、今年4月に東急百貨店本店(渋谷)、5月に石川県金沢市の大和百貨店香林坊店に出店している。コロナ禍にまっただ中の出店だ。

 さらに7月22日にオープンする池袋東武店は、5階の1200平方メートル以上のフロアに約1000点の家具インテリアを展開するという。5階はもともと紳士服のフロアだった。業界通は言う。

「匠大塚は未上場のため、正確な業績は分かりません。ですが、これだけ出店を続けているのですから、決して経営は悪くないのだと思いますし、この機を逃すまいと攻めに転じたのでしょう。昨年からコロナ禍でリモートワークが増え、紳士服はあまり売れていません。その一方、在宅時間が長くなったことで、自宅の家具の買い換え需要が増えています。おそらくこれまでの出店は、デパートからの引き合いがあったのだろうと思いますが、勝久氏はここで勝負に出たのだと思います」

ニトリとのバッティング

 とはいえ、コロナ禍での木材需要は世界的に高まっており、日本では輸入木材が高騰しているとも報じられている。匠大塚はそうした影響は受けないのだろうか。

「匠大塚はメーカーではありません。完成品を大量に仕入れ、倉庫で保管して売っていくビジネスモデルですから、材料の値上げは吸収できる体質かもしれません」

 コロナ禍で家具の需要が増えると言っていたのは、大塚家具の久美子前社長も同様だったはずだ。

「久美子前社長の場合、15年に社長に返り咲き、会長だった勝久氏を退任させてから、それまでの高級家具路線を否定、中価格帯にしてニトリやイケアと勝負すると路線を変更しました。彼女は後に、そんな宣言はしていないと否定していましたが、間違いなく言っていました。それが証拠に、勝久氏は『ニトリさんとかイケアさんを意識してしまったら間違えます』と語っていましたからね。事実、16年には南船橋のショッピングセンターでニトリと同じフロアに出店したのですが、完全にバッティングしてしまい、全く上手くいきませんでした」

 今回、匠大塚が出店した池袋東武の6階にもニトリがある。

「勝久会長は高級家具路線を守っていますから、ニトリとも全く競合しません。実は、彼は大塚家具の頃から全くブレていないのです」

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