オリックスも続くか? たった5回しかない前年最下位からの「ミラクルV」を振り返る

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張本勲獲得で“OH砲”を形成

 広島初Vの翌76年は、前年に球団史上初の最下位の屈辱を味わった2年目の長嶋巨人がV9以来3年ぶりに優勝し、2年連続の“下剋上V”となった。

 日本ハムから張本勲を獲得し、王貞治と“OH砲”を形成。外野の名手・高田繁の三塁へのコンバートも成功し、太平洋から獲得した加藤初も4月18日の広島戦でノーヒットノーランを達成するなど、打つ手打つ手が見事に当たった。

 当初「開幕30試合で17勝」を目指した長嶋茂雄監督だったが、5月に14連勝を記録するなど、目標を大きく上回る21勝で一気に首位浮上。9月にも13連勝し、10月10日からの阪神との天王山3連戦も、負けなしの2勝1分けで、5ゲーム差と突き放した。

 そして、10月16日に広島を5対3で下し、優勝を決める。長嶋監督は「眠れぬ夜もあったが、選手たちの苦労に比べると、私の苦労など小さなものです。コーチが手足のようによく動いて、選手もよくやってくれた」と指揮官としての初Vに感慨もひとしおだった。

“いてまえ打線”がもたらした奇跡

 それから25年後の2001年、2年連続最下位だった近鉄が、パ・リーグ史上初の“下剋上V”を達成。211本塁打と破壊力満点の“いてまえ打線”がもたらした奇跡だった。

 シーズン終盤の9月にダイエー、西武とともにゲーム差なしで並ぶという大混戦のなか、近鉄は9月24日の西武戦で、中村紀洋の逆転サヨナラ2ランが飛び出し、M1が点灯。同26日のオリックス戦では、2対5の9回裏に代打・北川博敏が史上初の逆転サヨナラ満塁V決定弾を放つという、ミラクルに次ぐミラクルで12年ぶりの優勝を手にした。

 梨田昌孝監督は「夢のような優勝です。今年は最後まであきらめないという野球ができた。今日の試合はそれを実証できました」と感激し、北川も「野球を続けてきて本当に良かった」と声を震わせた。

 04年限りで球団消滅した近鉄にとって、これが最後の栄冠となった。

 そして15年、2年連続最下位だったヤクルトが、真中満監督の選手目線に徹した采配の下、“トリプルスリー男”山田哲人らが躍動し、14年ぶりの優勝を実現している。

“下剋上V”をはたした5人の監督の共通点は、就任1年目が3人、2年目が2人と、いずれもチームを任されて1、2年のうちに結果を出していることだ。今季就任1年目のオリックス・中嶋聡監督も続くことができるだろうか。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年7月16日掲載

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