気づけばあなたも「小室佳代さん」に? 我が子、我が孫をダメにする「子ども依存」

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結婚したら眞子さまは…

 子ども依存の親が70代、80代になって孫ができると、世の習わしで、「祖父母は孫に甘くなる」ことから孫に直接介入することはあまりありませんが、親、つまり自分の子どもを通して孫に干渉しようとする傾向にあります。

 具体的には、「そんな学校はダメだから受験させろ」「習い事をさせろ」、挙句に「あなたじゃ、ちゃんと世話ができないから孫をうちに預けなさい」と言い出す。祖父母による親を通じた孫への過干渉の結果、親の家庭がめちゃくちゃになってしまうこともあります。子ども依存の親の元で育ったある50代の女性は、未だに親の過干渉が怖くて、実家に帰って親と顔を合わせるのが何よりも恐ろしいと言っていました。

 人は誰しも自分の中に「愛情の器」を持っています。そこから溢(あふ)れた分の愛情しか、他者に注ぐことはできません。つまり、自分自身が充分な愛情を受けていないと、他人に愛情を注ぐなど無理なのです。

 満たされない何かを埋めるかのように「我が道」を突き進む佳代さんには、おそらく他者からの愛情が不足している。そのため圭さんに対しても愛情を注ぐことができず、息子という「自分の所有物」「作品」に支配欲をぶつけているだけに見える。そしてきっと圭さんも愛情が足りていない。

〈愛深きがゆえと思われた過干渉は、実は愛情に基づくものではなかった……。そして子ども依存の親がもたらす弊害は、第三者にも「飛び火」する。〉

 愛情が足りていない人は、結婚しても配偶者に愛情を注ぐことができず、一方的に「愛されたい」という欲求ばかりを募らせます。また、過干渉の親に何でもやってもらってきたせいで、配偶者に対しても「何でもやってくれて当たり前」と感じることになります。

 小室親子のケースで言うと、仮に圭さんが眞子さまと結婚しても、佳代さんと圭さんの子ども依存関係は続きます。そして佳代さんに何らかの危機が訪れた場合、圭さんは今度は眞子さまも動員して佳代さんを守ろうとすると思います。親に依存され、親の世界観の中にすっぽりと収まっている子どもは、何よりも親を守ろうとするからです。

 とりわけ息子の場合、「騎士」として母親をガードしようとする。「元婚約者」とのやり取りを、弱冠20歳の圭さんが録音していたのも「騎士」だからこその行動だったのでしょうし、4月に公表された28頁にわたるいわゆる「小室文書」も、よく読むと結局は「母親は借金などしていない」という弁明に終始していました。彼自身に真の意味での主体性はなく、あくまで母親を守るためにあの文書を出したように見受けられます。

 そもそも、子ども依存の親に育てられた子どもは、大人になっても社会に馴染(なじ)んで生活することが難しい。「佳代さん型」の場合、親から「あなたは凄い」と言って育てられているので、「凄くない自分」を許せず、例えば会社に就職しても一組織人に過ぎない自分を認められずに、すぐに辞めてしまったりする。たしか、圭さんも三菱東京UFJ銀行をすぐに辞められていたはずです。

 子ども依存の親の元で育つ他の弊害としては、平気で嘘をつくようになる傾向も挙げられます。

 過干渉の親に育てられたある30代の既婚男性は、子どもの頃の癖が抜けず、些細なことで嘘をついてしまうと悩んでいました。例えば、半休を取って趣味のサイクリングをしていたのに、奥さんには言えず「仕事に行っていた」と嘘をつく。これは、常に束縛してくる親の目をかいくぐるために嘘をつき続けていた悪影響です。子ども依存の親に育てられた子どもは、とにかく親に怒られ、嫌われることを恐れます。そのため、怒られることに対する自己防衛本能が肥大化し、大人になっても些細なことで嘘をついてしまうのです。

執着を薄くする術

 では、子ども依存から脱却するにはどうすべきか。

 子どもに依存する親は、圧倒的に父親よりも母親が多い。それは一般的に、父親の生活が仕事中心で、子どもに関心を向ける時間が少ないことに起因します。「子どもではない他の関心事=仕事」があるために意識が分散され、子どもに執着せずに済むのです。

 したがって解決策のひとつは、子どもではない、没頭できるものを探すことです。楽器の演奏でもいいですし、ヨガなど体を動かすことでもいい。とにかく夢中になれることを見つける。

 その意味で、アイドルにハマってみるのも、実は子ども依存からの脱却の早道と言えるかもしれません。フィギュアスケートの羽生結弦くんや、韓流のBTSといった「私だけの王子様」を見つけて彼らに心をときめかすことになれば、その分、文字通りの「私だけの王子様」である我が子への執着が薄れます。

 また、子どもの反抗期を「あって良し」と受け入れることも重要です。子どもは反抗期を経て「真っ当な大人」になります。反抗期とは何か。それは自己主張することを学ぶ人生の大事な過程です。自己主張を通じて、親と自分は別の人格であることを自覚し、親がいつも正しいとは限らないことに理解が及ぶようになる。反抗期とは精神的な自立の期間なのです。

 ところが子ども依存の親の元で育つと、「親の言うことを聞かないと大変なことが起こる」という恐怖心を植えつけられ、自立の過程を奪われてしまう。

 冒頭で触れた雑誌記事の件に戻ると、小室文書以降、圭さん自身は記者会見などで何の説明もしていないのに、今回、母親である佳代さんが前面に出てくる形となりました。そこで改めて佳代さんは、要は元婚約者からの金銭は借金ではないと訴えた。この佳代さんの行動に込められたメッセージを、世間はこう読み解くのではないでしょうか。

「圭、私が何とかするから、あなたは何も言わなくていいのよ」

 親がどうにかするから子どもは何もしなくていい――。これこそ過干渉の親の典型的な振る舞いです。そうやって、ずっと子どもに責任を取らせないできた。ここから脱却しないと、子どもの問題解決能力が育つことは期待できません。

 大人になって社会に出れば、自分でトラブルを処理するのは当然のことです。それを子ども依存の親は妨げ、本当の意味での成長の機会を奪うことで子どもに害を与えている。まずは、そのことを自覚するべきです。結局苦しむことになるのは親ではなく、皮肉なことにあなたが愛しているはずの子どもなのですから。

山脇由貴子(やまわきゆきこ)
家族問題カウンセラー。東京都出身、横浜市立大学心理学専攻卒業。児童相談所に心理の専門家として19年間勤務。現在は「山脇由貴子心理オフィス」でさまざまな家族のカウンセリングを行っている。『モンスターペアレントの正体』など著書多数。

週刊新潮 2021年7月8日号掲載

特集「コロナ禍の『親子問題』第1弾 気づかぬうちにあなたも『小室佳代さん』に 『我が子』『我が孫』をダメにする『子ども依存』」より

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