世界が注目する日本発「抗老化サプリ」 「NMN」「5-ALA」の驚きの効果とは

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「若返り」の手段として多くの人が思い浮かべるのは「美容整形」だろう。が、メスもレーザーも使わずに「体の中」から若返るための「サプリ」を日本の会社が製造し、すでに市販されているのをご存じか。我々の手が届くところまで来た、「若返り」研究の最先端。

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 サプリで若返り。そんな宣伝文句を聞けば多くの人が眉に唾するのは間違いないが、実は、きちんとした科学的根拠を伴うものが複数存在し、市販もされていることをご存じだろうか。

 先にその物質名を明かしてしまうと、「NMN」と「5-ALA」。いずれも体内に存在する物質で、年を重ねるごとに減少することが分かっている。そこで、これらの物質をサプリなどで補うことにより、老化を抑制できないか――そんな研究が進められており、その「成果」は我々の手が届くところまで来ているのだ。

 しかし、特にNMNに関しては、ネットで検索すると多くの商品がヒットするが、怪しげなものも散見されるので注意が必要だ。安全な商品の選び方については追って触れるとして、まずは日進月歩の研究の最新状況をご紹介したい。

 NMNの正式名称は「ニコチンアミド・モノヌクレオチド」。体内だけではなく、ブロッコリーや枝豆などの食品にも含まれている。が、ごく微量であるため、食品から効果を体感できるほどのNMNを摂取するのは難しい。

「NMNの老化に対する作用を私の研究室が初めて発表したのは2008年のことでした」

 そう振り返るのはNMN研究の第一人者で老化研究の世界的権威、米ワシントン大学の今井眞一郎教授だ。

「その3年後の11年には、マウス実験で、老化によって起こる代表的な疾患である2型糖尿病に劇的な作用があることを示しました。では、ごく普通の健康なマウスにずっとNMNを投与し続けたらどうなるのか。それを実験して発表したのが16年。これも非常に大きな反響を呼びました。この研究により、少なくともマウスでははっきりとNMNが抗老化作用を示すことが分かったからです」

 実験では、5カ月齢のマウスが17カ月齢になるまでの1年間を観察。ちなみに5カ月齢のマウスは人間だと20代~30代、17カ月齢のマウスは50代後半~60歳にあたる。

「マウスも人間と同様、年をとると中年太りになりますが、NMNを飲ませ続けたマウスは体重の増加幅が小さかった。エネルギー代謝の効率が良くなっており、食べる量が多くなっても、そのエネルギーが代謝されやすい状態になっていました。また、骨格筋の中のミトコンドリアという細胞の中の小器官の働きが高まっていました」

 今井教授はそう語る。

「他にも、インスリンの感受性が良くなり、血中の脂肪の値も改善。目にある網膜の神経細胞の働きが活発になり、骨密度が高まり、免疫細胞の数も多くなっていました」

 まさに良いことずくめ。一体、マウスの体内では何が起こっていたのか。

 NMNを摂取すると、体内でNAD(ニコチンアミド・アデニンジヌクレオチド)と呼ばれる物質に変わることが分かっている。

「あらゆる生物はNADを、各臓器がエネルギーを使う時に必要な通貨のようなものとして利用しています。中でも、長寿遺伝子サーチュインの一つ、“SIRT1”は、NADを使うことで、脳にある視床下部の神経細胞を活性化し、全身のさまざまな機能を回復させることが分かっています」

 と、今井教授。

「マウスも人も、年齢と共にNADが減っていき、限界に達してしまうと、さまざまな神経細胞や、インスリンを分泌している膵臓のβ細胞などで問題が起こります。そして、それらの細胞を通して他の臓器や組織に問題がどんどん広がっていく。それが老化と捉えられる現象なのだろうと考えられています」

 体内でeNAMPTという酵素によって合成されるNAD。今井教授は19年、ある実験の結果を発表した。

「26カ月齢、人間で言うと70代後半か80代に相当するマウスに、3カ月間、若いマウスから取り出したeNAMPTを注射し続けたのです。すると、注射しない方のマウスはゆっくりとしか動けない状態のままですが、注射した方は元気に走り回るようになりました」(同)

 掲載のマウスの写真をご覧いただきたい。毛並みが艶々しているのがeNAMPTを注射したマウスで、毛の抜けた跡が目立つのが注射していないマウスである。

膨大な数の商品

 さまざまな研究により、マウスでは非常に大きな抗老化作用があることが分かったNMN。果たして、人間でも同様の効果があるのか。今井教授らのグループは、アメリカで17年から女性にNMNを経口投与する臨床試験を行ってきて、今年4月、その結果を発表した。

 臨床試験に参加したのは肥満があり、糖尿病になる確率が高いとされる55歳~75歳の閉経後の女性。13人が1日250ミリグラムのNMN、12人が偽薬を10週間にわたって飲んだ。その結果、NMNを飲んだグループでは、骨格筋でインスリンの働きが25%上がっていることが分かった。体重70キロの人が7キロ体重を落とした時に得られるメリットと同程度の効果があったのだ。

 しかし脂肪や肝臓ではさしたる効果は見られず、血糖値の変化もなかった。

「マウスの実験よりもNMNの投与量が少なく、期間が短いことが関係しているのかもしれません。実は去年10月から第2次の臨床試験が開始されていて、今度は1日300ミリグラムで16週間、男性も女性も対象にして行っています。研究資金はアメリカ国防総省が出しています」(同)

 人間での効果が科学的に証明されるのはまだまだこれからということになるが、

「すでに膨大な数のNMNの商品が巷に溢れています。中には、生体内には存在しないと考えられる物質が含まれている商品もあったりするので、注意が必要です」

 と、今井教授。

「世に出回っている製品で、動物とヒトで安全性と効能が確認されているのは二つの会社のものだけ。立場上、製品名は言えませんが、どちらも日本製です。公知の事実として申し上げると、オリエンタル酵母工業は世界で初めてNMNの大量生産の方法を開発した会社。また、ミライラボバイオサイエンス社は世界で初めてNMNを商品化した会社です。NMNは日本発の抗老化物質なのです」

 オリエンタル酵母工業は主に研究用試薬を作っている。ミライラボバイオサイエンス社のものは一般消費者でも購入できる。

「お客様からは、疲れを感じにくくなった、睡眠の質が改善された、肌のはりつやがよくなったなど、さまざまな声が寄せられています」

 ミライラボバイオサイエンス社の取締役、島村大蔵氏はそう語る。

「私は今43歳で、もう6年以上NMNを飲んでいますが、まず、1カ月おきくらいに起こっていた偏頭痛がなくなりました。あと、85キロあった体重が徐々に落ちて67・8キロになり、肌がきれいですねと言われることが増えましたね」

 ちなみに同社の商品は高いものだと、60粒入りで34万5600円。1粒5760円である。お手頃なものでも60粒入りで6万4800円。1粒1080円だ。1粒に含まれるNMNの量によって値段が変わるが、いずれも誰もが明日から飲み始められる価格ではない。

「確かに現在は高品質なNMNは高額ですが、今後、技術革新が行われていくはずなので、それ程遠くない未来、価格は急激に下がっていくと思います」(今井教授)

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