「伊藤沙莉」を実兄は“天才女優”と絶賛 彼女が役作りを学んだ意外な場所とは

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 伊藤沙莉(27)の破竹の勢いが止まらない。ナレーターだった「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジテレビ系)は終了したが、ヒロイン役を務めるNHKのドラマ「いいね!光源氏くん し~ずん2」(月曜午後10時45分)が好評放送中。舞台とNetflixのドラマもある。「超」が付くほどの人気者となった理由は?

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 伊藤がヒロイン役の「いいね!光源氏くん し~ずん2」は佳境に入り、6月28日が最終回。一方、やはりヒロインを務める舞台「首切り王子と愚かな女」は東京・PARCO劇場で上演中。さらに6月24日からはAVメーカーのメイク担当役で出演したNetflixのドラマ「全裸監督 シーズン2」の配信が始まった。売れに売れている。

 なぜ、伊藤が成功したかというと、なにより大きいのは本人の努力に違いない。伊藤は昨年9月28日掲載のデイリー新潮のインタビューにこう答えていた。

「(9歳で子役デビューした後、仕事がなくなると)たくさんバイトしていました。バイトはあえて接客業ばかりしていました」(伊藤、以下同)

 なぜ、接客業だったかというと、客の人間性を観察し、頭の中にファイリングしておいて、役作りに生かすためである。

「モノマネというわけではないのですが、演じる役がファイルの中にある人に近い時は、それを自分にグッと引っ張ってきます」

 子役仲間の中には仕事が来ない時期の自分を、「ニート」と卑下し、腐るばかりの者もいた。だが、伊藤は常に前向きだった。演技の世界をあきらめなかった。

 一方、売れっ子となっても浮かれない。極めて冷静だ。

「自分に対してプラスの意見を持ってくれている人が以前より増えているとしたら、減るのが怖いですね。SNS時代ですから、引っ繰り返るのなんて、あっと言う間です」

 この言葉からも垣間見える通り、伊藤は苦労人。幼いころに父親が蒸発してしまった。兄でお笑いコンビ・オズワルドの伊藤俊介(31)と姉の3人で知人宅に身を寄せていたこともある。その間、母親が懸命に働き、自分たちが住むアパートを借りるためのお金を貯めた。

 伊藤は自分たちのために身を粉にして働いた母親に家を買ってあげたいと思い、頑張ってきた。これまで艶聞も醜聞も一切なかったが、それも不思議ではない。

 努力の人であるものの、才能にも恵まれた。まず声が抜群に良い。古くから、役者にとって大切なのは「一声」「二顔」「三姿」というのが定説であり、一番大切なものに恵まれた。一般的な捉え方の美声ではないかも知れないが、個性に溢れ、魅力的な声だ。

 だから「大豆田とわ子と三人の元夫」のナレーターも託されたのだろう。伊藤は期待に応え、ドラマの味わいが深まった。また昨年放送されたNHKのアニメ「映像研には手を出すな!」では主人公・浅草みどりの声を担当。拘りの強い原作コミックのファンたちからも絶賛された。

 もっとも、本人は自分の声が好きではない時期もあったという。

「一時期は『邪魔だな』と思っていました。『得する声じゃないな』と。特に学生時代です。でも、声のお仕事をいただくようになって、『だったら、もっと磨きたい』と思うようになりました。磨くといっても、この声しか出ないんですけど(笑)」

「いいね!光源氏くん」の好演

 伊藤は声だけでなく口跡(こうせき)もピカイチ。口跡とはセリフの言いまわしのことで、これが良いと、どんなに早口であろうが、はっきりと聞き取れる。例えば昭和の名優・渥美清さんの口跡は絶品で、だから「男はつらいよ」は啖呵売のシーンを見せ場に出来た。

 伊藤の場合、ヒロインのOL・藤原沙織役に扮する「いいね!光源氏くん し~ずん2」で、時に早口をこなさなくてはならない。同居させている光源氏(千葉雄大、32)を叱る時や、勤務先のメーカーで光との関係を誤魔化す時などである。かなりの早口にも挑まなくてはならないが、鮮やかにやり遂げている。もちろん視聴者にもはっきりと聞き取れる。

 このドラマはゆる~く笑えるラブコメ。光との関係性によって沙織の心象風景は微妙に変化する。それを伊藤は表情だけの演技で的確に表している。僅かに顔色を変える程度で見る側に沙織の内面を伝えきっている。見る側をシラケさせるオーバーな演技は決してしない。

 例えば第2話で、光が平安時代に残してきた妻・紫の上(紺野彩夏、22)に対し、未練があることを知った時の表情は最高だった。怒りと落胆、悲嘆が入り混じっていた。

「あちらの世界でもどこでも今すぐお帰りください」(伊藤が扮した沙織のセリフ)

 沙織は光の衣食住すべての面倒を見ている。こう言いたくなるのも当然だろう。

 このドラマの原作は漫画だが、幅広い世代が楽しめる作品に仕上げられた。光は歴史的プレイボーイなのに、沙織の前では少年のよう。2人は同居しているものの、大人の関係にはなっていない。

 まるで中学生の彼氏と彼女のような間柄。そんな設定を可能にしたのは、伊藤に清潔感とボーイッシュな一面があるからだ。

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