「1日4000人違反」コロナ水際対策は“税金の無駄遣い” ビデオ通話が女性に不評の理由

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 東京五輪が目前に迫り、新型コロナウイルスの水際対策強化が喫緊の課題となっている。厚労省によれば、帰国時に義務付けられた14日間の自主隔離期間中に、位置情報アプリの返答などを怠る違反者は、1日につき約4000人にも及ぶという。だが、当の帰国者からは国の施策を「抜け穴だらけでまったく無意味」「税金の無駄遣い」などと、逆に批判する声が噴出しているのだ。隔離生活が実行されているか“監視”するツールとなっているビデオ通話で、不快な思いをしたと訴える女性もいる。

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いまだ1件も氏名公表の実績はなし

 現在、海外から帰国する人は、自宅やホテルなど自ら申告する待機場所での「14日間の自主隔離」が義務付けられている。帰国時に空港で受けるPCR検査が陰性だったとしてもだ。潜伏期間が原因で、帰国後数日経ってから発症するケースがあるからである。いまも航空会社が減便するなか、1日平均2万6000人の帰国者がいるという。

 帰国者に課せられることは、基本的に二つ。毎日、厚労省が管轄する「入国者健康確認センター」から送られてくるアンケート式の健康状態を尋ねるメールに返信することと、入国の際にスマートフォンにインストールさせられた「位置情報アプリ」に通知が入った時にボタンを押すことだ。だが、当初は罰則もなく、在宅確認のため1日1回かかってくると言われていたビデオ通話もほとんど実施されなかったため、応答しない違反者が続出した。

 そこで厚労省は3つの強化策を導入した。5月からは連絡が取れない違反者に対し氏名公表の可能性があると警告するメールを送付。同時にほぼ毎日、帰国者にビデオ通話をかけられるようにスタッフを増員し、体制を強化した。3日以上連絡がない人に対しては、自宅の見回りも開始した。

 だが、効果は上がっているとは言えない状況だ。今も毎日、帰国者の15パーセントにあたる約4000人が、アプリやメールでの報告を怠っているという。4日以上連絡を断っている人も3、40人いるという。

「結局、違反者の氏名公表もいまだ1件も実行されぬまま。みな高をくくってしまっているのです。そもそも、氏名が公表されて困るという人がどれほどいるのか、という議論もある」(厚労省関係者)

意味のないビデオ通話

 だが、14日間の自主隔離を経験した帰国者たちに聞いてみると、「そもそもこんなザルのような監視体制は意味がない」と口を揃えて訴えるのである。6月にアメリカから帰国し、14日間、誓約を守って自宅で過ごしたという男性はこう振り返る。

「ビデオ通話は『MySOS』というアプリでかかってきます。通話が始まったら、『カメラをオンにしてください』と言われて、背景が自宅かどうかを確認して終わりです。1分程度ですかね。スマホから離れたところにいたら気づかないこともある。でも、折り返しても通じないんです。また1日、ビデオ通話に出られなかったといって、何が起きるわけでもない。実際、最初に『食事中や風呂に入っている時、会議中などは無理して出なくても大丈夫』とも言われ、3日に1回くらい出ていれば文句を言われないのかな、という印象を受けました」

 しかも、このような確認方法では、自宅にいるかどうかなど分かりっこないと言う。別の帰国者もこう呆れる。

「屋内にいればいいだけなので、友達の家にいたって同じですよね。実は、一度どうしても出勤しなければならない時があって、オフィスにいた時にかかってきたこともあったのですが、カーテンを見せて自宅を装ったら、『はい、OKです』。なんて意味のない対策なんだろうと思いました。位置情報アプリも1日2回通知が来ますが、気づかないこともある。けれど、3、4時間後に返してもまったく問題とされません」

 位置情報アプリを巡っては、抜け穴があるとも指摘されている。5月に帰国したある男性は、スマホ2台持ちで、幾度か仕事での外出を切り抜けたと語った。

「空港で位置情報アプリを職員の目の前で入れさせられるのですが、使用していなかった古いスマホにSIMカードを入れ替えて、アプリの入ったスマホを家族に預けて外出していました。通知が来たら代わりにボタンを押してもらうのです。実は、このような情報がTwitterなどで出回っていて、帰国者たちは傾向と対策を学んでいるんです。午前中にビデオ通話がかかってこないとか、夜の8時以降は通知が来ないとか。それに合わせてこっそり外出している人たちも多い」

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