阪神青柳、マエケン…プロ野球で本当にあった「雨にまつわる“珍エピソード”」

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「天気の神様、ゴメンナサイ」

 試合前に異例の“雨乞い”を行ったのが、日本ハムのマット・ウインタースだ。

 91年7月7日のダイエー戦の試合前、ウインタースはグラウンドに亀の絵を描いた。「レイン・タートル」と呼ばれる米国式の雨乞いのおまじないである。

 チームは1週間遠征続きで、ナインの疲れもピーク。おあつらえ向きに、この日は80パーセントの降雨予報とあって、雨で試合が中止になるようお祈りしたというしだい。

 ところが、雨はパラパラ程度しか降らず、予定どおりプレイボール。そんななか、ウインタースは2回に近鉄のラルフ・ブライアントと並ぶリーグトップの先制22号ソロを放った。

 ダイヤモンドを1周したウインタースは、すぐさま亀の絵を消し、「天気の神様、ゴメンナサイ」と雨乞いを撤回した。

 5月6日のダイエー戦がノーゲームとなり、本塁打を1本損しているので、同じ轍を踏みたくなかったのだ。その思いが天に通じたのか、試合は成立。ウインタースは9回にも23号2ランを放ち、勝利に貢献した。

 ウインタースといえば、雨の日に水しぶきを上げて本塁にヘッドスライディングをするパフォーマンスでも有名だが、その先駆者的存在が、80年に来日した広島のマイク・デュプリーである。

 同年8月15日のヤクルト戦、雨で試合開始が20分遅れると、デュプリーは無人のグラウンドに姿を現した。第1球を見送る動作のあと、球審にクレームをつけるジェスチャーも交えながら、2球目をフルスイングしてダイヤモンドを1周。三塁ベースを回ったところで、打球の行方を確認するポーズも忘れず、最後はお約束どおり、水しぶきを上げて本塁にヘッドスライディングを決めた。

 古葉竹識監督ら5人が「一人5000円ずつやるから」と持ちかけたという話なので、デュプリー以前にも日本ではおなじみのパフォーマンスだったようだ。

 ドーム球場が普及した昨今だが、それでも12球団中6球団が屋根なし球場を本拠地にしており、雨にまつわる珍事も尽きることはなさそうだ。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年6月18日掲載

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