鳥谷、糸井、福留、そして松坂…40代ベテランで「生き残る選手」「消える選手」

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 40歳。一般社会であれば働き盛りの時期であるが、プロ野球の世界では大ベテランと言われる年齢である。今年満40歳以上で、NPBで現役としてプレーしている選手は外国人のサファテを含めてもわずか12人(1982年の早生まれの青木宣親は除く)。この数を見ても、40歳で現役を続けることの難しさがよく分かるだろう。

 中にはまだまだ主力となっている選手もいるが、二軍暮らしが続いている選手も存在している。そんな40代の選手で、来年も現役を続けられる可能性が高いのは誰なのか。今シーズンのプレーぶりから探ってみたい。

空振りを奪える大きな武器

 まず、最も可能性が高い選手と言えば和田毅(ソフトバンク)になるだろう。2018年には左肩の故障で一軍登板なしに終わったが、その後は見事に復活。昨年は16試合に先発して8勝1敗、防御率2.94という成績を残し、チームの日本シリーズ4連覇にも大きく貢献している。

 今年も層の厚いチームの中で開幕ローテーション入りを果たした。5月13日に一度登録抹消となったが23日に一軍復帰すると、オリックスを相手に7回途中1失点の好投で復調ぶりをアピールした。

 若い頃から球威で圧倒するタイプではなかったが、年齢を重ねてもストレートの勢いが落ちることはなく、空振りを奪えるのは大きな武器である。コンディション不良などから時折戦列を離れることはあるものの、そのピッチングからは衰えは全く感じられない。左の先発投手が少ないチーム事情を考えてもまだまだ貴重な戦力であり、今年は二桁勝利も期待できそうだ。

 投手で、和田に次ぐ存在感を見せているのが、今年で42歳となる能見篤史(オリックス)だ。昨年阪神から構想外となり、コーチ兼任としてオリックスに移籍したが、キャンプから順調な調整を続けて開幕一軍入り。4月10日には移籍後初ホールドをマークすると、5月に入ってからは抑えも任せられるなど、フル回転の活躍を見せている。

 若い頃のように打者を完璧に圧倒するようなピッチングは見られなくなったが、ストレートはいまだに145キロを超えることが珍しくなく、フォークという決め球があるのも大きい。どんな場面を任されても淡々と腕を振り続ける姿は立派の一言であり、今後も貴重な左の中継ぎとして重宝される可能性が高いだろう。

 投手でもう1人まだ戦力として残る可能性が高いのが、能見と同じ学年の石川雅規(ヤクルト)だ。今年の一軍登板は4月16日の阪神戦のみで、この試合も負け投手となったものの、5回を投げて2失点、6奪三振と持ち味は十分に発揮。その後は二軍での調整が続いているが、イースタンリーグでは安定したピッチングを続けている。

 若い頃のようなフォームの躍動感はなくなり、手を替え品を替え、何とか打者を打ちとっているというのが現状だが、コントロールと投球術はまだまだ高いレベルにある。ヤクルトは功労者には優しい球団で、本人もあと27勝と迫っている通算200勝達成へ意欲を示しており、致命的な故障がなければ、来年もプレーを続けることが予想される。

スピードとパワーは健在

 一方、野手で貴重な戦力となっているのが、糸井嘉男(阪神)と鳥谷敬(ロッテ)だ。

 糸井は、ルーキー・佐藤輝明の加入もあって、出場機会は大幅に減少しているが、今シーズン初スタメンとなった5月7日のDeNA戦でいきなり第1号ホームランを放つと、続く9日の試合では、決勝のツーランを叩き込みチームの勝利に大きく貢献した。近年は度重なる故障に悩まされているが、超人と呼ばれるスピードとパワーはまだまだ健在。外野の貴重なバックアップ要員として大きな戦力といえる。

 昨年わずか5安打に終わった鳥谷。今年はキャンプから好調をキープして開幕戦ではスタメン出場を果たし、4月以降は代打、代走、守備固めとあらゆる役割をしっかりこなしている。脚力は大きく衰えておらず、打撃面の状態の良さも目立つ。守備面では、全盛期のような守備範囲や送球の強さは見られなくなったが、堅実なプレーは健在だ。優勝経験があるという点もチームには大きなプラスと言えるだろう。

 もう1人野手で残る可能性がありそうな選手は、鶴岡慎也(日本ハム)だ。ここ数年、出場機会が減っているとはいえ、豊富な経験は貴重。控え捕手としてまだまだ存在感を示している。日本ハムは過去にも中島聡(現オリックス監督)がコーチを務めながら、長く現役を続けたという実績もあり、鶴岡も同じ道を歩むことは十分に考えられる。

 ここまでは戦力となっている選手を6人取り上げたが、残りの6人については厳しいと言わざるを得ない状況だ。

 球界最年長の44歳となる福留孝介(中日)は今年から古巣に復帰し、主に代打で起用されているが、成績は芳しくない。チームメイトで現役投手最年長となる山井大介、外野手の藤井淳志も二軍暮らしが続いている。唯一の外国人選手であるサファテ(ソフトバンク)は故障からの復帰のめどが立たず、長年控え捕手としてチームを支えてきた高谷裕亮(ソフトバンク)も出場した試合はわずかだ。

 そして、“松坂世代”のトップランナーとして一時代を築いた松坂大輔(西武)も長引くリハビリ生活が続き、実戦復帰の話は聞こえてこない。球団にとっては功労者と言える選手ばかりだけに、本人の意思を尊重することも考えられるが、このままの状態が続くようであれば、今年が最後のシーズンとなる可能性は極めて高いだろう。

西尾典文(にしお・のりふみ)
野球ライター。愛知県出身。1979年生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行う。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

デイリー新潮取材班編集

2021年6月8日掲載

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