事件現場清掃人は見た “山谷アパート”で亡くなった「20代男性」の信じられない“死因”

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を出版した高江洲(たかえす)敦氏に、山谷のアパートで亡くなった20代男性について聞いた。

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 特殊清掃の現場では、様々な人生を歩んできた人と出会うことがある。

「不動産管理会社の知人から、相談を受けました。入居者がいる部屋の特殊清掃をしてほしいというのです」

 と語るのは、高江洲氏。

「入居者がゴミを出せないため、悪臭がして近隣住民から苦情が出ていると。現場は、東京の山谷にあるアパートでした」

 高江洲氏は、知人と一緒に山谷に向かった。

ガリガリに痩せて

「かなり古いアパートで、6畳1間にキッチンという間取りでした。家賃も格安だったと思います。部屋に入ると、20代後半くらいのガリガリに痩せた男性がいました。ヘビーメタルのミュージシャンのように髪を伸ばし、後ろで束ねています。赤のチェックのネルシャツにジーンズ、革ジャンを着ていました」

 高江洲氏は当初、いわゆる「ゴミ屋敷」を想像していたという。

「ところが、部屋は意外と小綺麗に片付けられていました。ただ、小さなキッチンには食べ残した弁当がいくつもあり、小さな鍋には、腐敗したインスタントラーメン、腐った野菜もありました。これらが悪臭の原因のようでしたが、それ以外にまだ変な臭いがするのです」

 高江洲氏は、そこで男性に事情を聞いてみた。

「悪臭を消すために、香水をまいたというのです。そのため何とも言えない臭いになったようでした。このアパートは内廊下になっているため、臭いがこもりやすい。それで苦情がでたようです」

 高江洲氏は、清掃をするために部屋を改めて見まわしてみた。

「パイプベッドが置かれ、壁にはロックスターのポスターが貼られてありました。収納のない部屋でしたので、小さなタンスがあり、本箱には月刊誌などがきちんと並べられていました。スタンドにギターが立てかけてあり、壁にはシャツやジーパンがかけられていましたが、衣類はごくわずかしかありません。玄関にある靴も、ラバーソウルのブーツ1足だけでした」

 部屋の床やタンス、本箱や衣装などには、ホコリが溜まっていたという。

「洋服の上にも、薄くホコリがついていました。ホコリがなかったのはギターだけでした。いつも演奏していたのでしょうね」

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