制作者が明かす「痛快!ビッグダディ」秘話 林下一家“奄美大島移住”の真相

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長女の高校進学問題

 それまで林下家にテレビ出演の経験はなかった。

「9人の大家族というだけでもテレビ的には面白い要素ですが、実際に会って話してみると、とにかく清志さんがすごかった。“キャラクターの塊のような人”とでも言いましょうか、アクが強くて、とにかく普通にはない面白さを持った人物だったんですよ。この家族を追えば、絶対に面白い番組になる。“金の卵”を見つけたと確信しました」(同)

 実は、この時、林下家には長女・愛美さんの高校進学を巡り、切実な問題があった。

「家から一番近い高校に通うにしても、バスの定期代が月に3万円掛かるというのです。清志さんの収入だけでは、到底その交通費を出すことは出来ない。だから、愛美さんを愛知に住む元妻のところへ預けるべきかと迷っていました。一方で、清志さんの中には長女だけを愛知に住まわせる選択肢はないようで、いずれ一家で愛知に引っ越し、一緒に生活したいとも考えていた。そうは言っても、清志さんには一家9人の引っ越し費用を出せるほど金銭的な余裕はありませんでしたが……」(同)

 そこで、石川氏は、子育てへの金銭的な支援が充実した地域へ移住してはどうか、と一家に提案した。当然、その様子をテレビで放送するという目的があってのことだった。

「予想に反して、清志さんはあっさりとその提案を受け入れてくれました。そこで、我々は条件に合う移住先を一緒に調べることを約束したのです」

“テレビ的に面白い”から奄美へ

 番組は、林下家の条件に合うような移住先のリサーチを進めた。そこで候補として上がったのが、岩手から2500キロ離れた鹿児島県の奄美大島だった。

「奄美大島の大和村というところには、移住者に向けた施策があり、高校のバス通学の助成もあるようでした。家賃が安い家もありそうでしたし、自給自足の生活が可能で食費が抑えられるといったメリットもありました。他にも似た条件の候補地はありましたが、奄美に決まったのはテレビ的な思惑もありましたね。奄美の南国らしい風景で撮影が出来たら、いかにも面白そうじゃないですか」(同)

「痛快!ビッグダディ」の第1回放送(2006年9月26日)では、清志氏がパソコンを使い、移住先の情報収集をするシーンがある。そこに、〈父はある南の島に引き付けられた〉とのナレーションが流れる。あたかも清志氏が偶然見つけたかのように見えるのだが、その時点で既に奄美大島へ引っ越すことは決定していたのだ。

 どのみち、林下家では、長女の下に1学年差で長男、次男、三男が続く。いずれ彼らの高校進学時も金銭的な問題が持ち上がることは明らかだった。番組側が条件に合う移住先をリサーチし、さらに引っ越し費用まで負担するというのだから、林下家にとっては願ってもみない提案だったのだろう。

「二つ返事でOKを貰えたのは良かったですが、清志さんがあまりに楽観的に考えているようで、少し心配にもなりましてね。テレビに出るということは、リスクもあるということを伝えました。例えば、家の様子をテレビで流すのだから、学校で『お前の家は貧乏』などと言われて、子どもたちが傷つくことがあるかもしれない。これまでの番組作りの経験から、テレビは良くも悪くも人の人生を変えてしまうことがあるということを、知っていましたから、清志さんにもそこはしっかりと説明しました」(同)

 そこで、清志氏は家族会議を開き、8人の子どもたちにも番組出演の了承を得た。どんなことでも会議で民主的に決定するのが、林下家の決まりだったのだ。

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