ビジョンが見えない枝野幸男代表の著書 謎の保守アピールを披露

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「次の総選挙は政権の選択肢となることを目指す」

 5月19日、記者会見でそう怪気炎を上げた立憲民主党の枝野幸男代表(57)。手にしていたのは、翌20日に発売された自著『枝野ビジョン』(文春新書)である。

 衆院議員の任期満了まで5カ月を切り、ようやく“政権構想”を提示した形だが、

「聞こえの良い理念を並べながら、肝心の財源は議論がスカスカ」(政治部記者)

 実際、ページを繰れば、〈雇用・子育ての不安解消〉〈消費拡大〉〈老後の「安心」〉と、それらしい言葉が並ぶが、財源については、〈(安倍政権で)不信感が高まり、納税意欲が萎(な)えてしまうことも仕方がない〉。つまり税金はいただきにくいですと媚びながら、〈「すべてのムダがなくならない限り負担増をしない」というのも、やや非現実的〉といったありがちな話に。

 で、落ち着くところは、〈優先順位の低い予算の振り替えと国債発行などによって対応せざるを得ない〉。

“財源なきバラマキ”と批判された民主党政権時代から、なんら進歩はないのだ。

 さらに、選挙への悪影響を恐れたか、

「あらゆる層に配慮しようとする苦心が透けるのも本書の特徴でしょう」(同)

 例えば、子育て支援は、〈子どもたちが将来の消費や税金などの担い手となる〉と言い切ったすぐあとで、〈経済のために子どもが生まれてくる訳ではない〉と、きれいごとで留保。

 賃金引き上げについても、〈倒産や廃業を余儀なくされる企業が出てくる。慎重かつ段階的に進めなければならない〉と神妙ぶりつつ、具体案はというと〈最低賃金制度や労働者派遣法など労働法制の整備や、労働運動への間接的な支援〉。

 これでは“官製春闘”で無理やり賃上げを要求した安倍政権と大差あるまい。

 結局、読みどころは、

「1章分を費やして書かれた“立憲民主党は保守本流”という保守層向けのナゾのアピールくらい」(同)

 目下“共産党色”の打ち消しに躍起な立民だが、

「驚いたことに“多神教の日本は古来、異なる価値に寛容”“水田稲作の社会は支え合いと助け合いの歴史”など、安倍前総理顔負けの“愛国史観”も披露しています。挙げ句“日本人の平和志向は『十七条憲法』に『和を以て貴しと為す』と記されて以来……”なんていうくだりまで。コレ、かつて自民党の稲田朋美衆院議員が日本の民主主義の礎を十七条憲法に見出して批判されたのと一体ナニが違うんでしょうかね」(同)

 ビジョンが見えない。

週刊新潮 2021年6月3日号掲載

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