堺市長選、公選法違反事件のウラに内閣府政務官、被告が公判を請求した狙い

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 元法務大臣の河井克行被告の裁判が進行する折も折である。このほど、大阪府堺市長選を巡る公選法違反事件で被告が無罪となった。裁判で“黒幕”と名指しされたのは、菅内閣で内閣府政務官の任にあたる岡下昌平衆院議員(46)。なんと、被告となった人物は“身代わり”だったというのだ。

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 岡下氏は当選2回で幹事長派閥である二階派に所属。菅内閣で内閣府政務官に抜擢された。沖縄及び北方対策などを担当し、河野太郎大臣の部下にもあたる。

 選挙違反の舞台は2019年6月、前任の竹山修身市長が政治資金問題で辞任したために行われた堺市長選である。大阪維新の会の候補の対抗馬として、元自民党堺市議の野村友昭氏が立候補したのだが、その野村氏を支援したのが、地元選出の岡下氏だった。

「岡下さんは野村選対の事実上のトップでした」

 とは堺市政関係者。

「ところが、その選挙が告示になる前に、陣営は野村氏の出身高校の卒業生約1万人に投票依頼の文書を送ったのです。告示前に投票を呼び掛けることは公選法で禁じられている事前運動にあたります」

 大阪府警は投開票後まもなく、当時37歳の選挙スタッフらを立件し、後に略式起訴された。その“裏工作”が白日の下に晒されたのは、今年4月15日のことだった。事件の判決が大阪地裁堺支部で下されたのだ。

「被告は無罪でした。府警の聴取時には自白をしていたのですが、“嘘の自白だった”と公判時に供述。それが裁判所に認められた格好です。さらに被告は“岡下さんは文書発送を事前に承知し、発送を手伝ってくれる人を募りたいと話していた”と暴露した。判決でも被告の供述に不合理な点はない、としています」(同)

バッジのない人物が…

 要は、裁判の中で菅内閣を支える政務官が公選法違反の“黒幕”だと名指しされたのだ。

「文書送付は選対本部の会議で決まっています。その会議の決裁権を持つのはトップの岡下さんでした。告示前の文書の発送をその会議で了承していましたから」(同)

 さらに当時の選挙スタッフが話を継ぐ。

「裁判で被告は自身が身代わりだったとしています。身代わりになることは事前に選対の面々に伝えた上で、自らの名誉のためにも、自分が身代わりであることを親しい関係者に知らせてほしいと自民党の市議らに依頼していました。しかし、何ら対応がなされず、呆れた彼は罰金刑で済むところ、あえて裁判を請求し、否認に転じたのです」

 二階派といえば、「面倒見の良さ」に定評があったはずだが、その看板はどこへ行ったのやら。

 さて、岡下氏に一連の経緯を尋ねると、

「そもそも私は選対のトップではないし、私の指示で文書が発送されたなんてことはありません」

 当の裁判で被告は「議員が有罪になると公民権停止になるので、議員バッジをつけていない人物が罪を被るのが政治の慣習」と証言している。

 選挙となれば何でもアリで法もルールもそっちのけ。今の自民党執行部と岡下氏に仁義はありや?

週刊新潮 2021年6月3日号掲載

ワイド特集「パパはニュースメーカー」より

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