菅田将暉、有村架純、仲野太賀、神木隆之介ら人気・実力派が集ったドラマ「コントが始まる」

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 人気も実力もポテンシャルも呼び声も高い俳優が勢ぞろいのドラマ「コントが始まる」について、ウォッチャーはどう見たか?

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 トマトを箱で買ったとき、ひとつふたつ尻が青いのがあれば、食べる順番も平和に決まる。熟れているモノから食べればいい。でも箱の中全部が完熟で真っ赤だったら? かなり焦る。焦って無駄にふんだんに使っちゃったりして、贅沢な完熟トマト祭りに。日テレのドラマ「コントが始まる」(土曜22時~)の第一印象が、まさにコレ。

 人気も実力もポテンシャルも呼び声も高い俳優が勢ぞろい。食べる、しゃべる、何気ない動作が演技を超えて日常そのものに見える菅田将暉(高岩春斗役)、不運や不遇を呪いつつも内面でトロトロに煮込むのがうますぎる仲野太賀(美濃輪潤平役)、そして神がかった大胆な所業をしれっとやってのける姿にまったく違和感のない神木隆之介(朝吹瞬太役)。いや、ひとりくらい「尻の青い棒演技イケメン俳優」をぶちこんでおけば、気も休まったのに。あまりの贅沢使いに、普段は決して求めない箸休めを欲してしまうではないか。

 この熟れた3人が演じるのは、売れていないお笑いトリオ・マクベス。高校生のときに結成し、「10年やって売れなかったらキッパリやめる」と親に約束。現実は厳しく、売れる兆しも気配もない。舞台だけでは食っていけず、共同生活をしながらアルバイトで糊口をしのぐ3人。そして約束の10年を迎えた今、それぞれが複雑な思いを抱きながらも、解散に向かう物語。

 毎回、舞台上のコントから始まる。コントのネタが3人の抱える問題や直面する現実と微妙にリンクする。結成に至るまでの過去の回想も織り交ぜ、3人のキャラクター、そしてとりまく人々の関係も徐々に見えてきた。ラストはコントのオチで終わる。うまいなと思う。「尻の青いトマト、確かにいらんわな」と思うようになってきた。

途端に面白くなってきた理由

 正直、最初は「芸人モノ」に興味がわかなかった。過去に芸人モノはあまた作られてきたが、たぶん又吉直樹が芥川賞を受賞した2015年以降の数年間がピークだったと思う。柄本時生の「初恋芸人」(NHK BSプレミアム・2016年)、林遣都&波岡一喜の「火花」(NHK・2017年)、中尾明慶の「Jimmy~アホみたいなホンマの話~」(Netflix・2018年※ホントは2017年だったけれど、ほれ、あの、小出恵介がね)、間宮祥太朗&渡辺大知の「べしゃり暮らし」(テレ朝・2019年)などなど。お笑い芸人を演じる役者の力量が問われる作品が増えて、売れない芸人というテーマをいろいろな切り口を見せてもらった気がする。

 そして、ここ数年はお笑い界の不祥事も立て続けに起こり、テレビを主戦場としない芸人の活躍も目立ってきた。「売れている=テレビに出る」でもなくなってきた。「お笑い混迷期」みたいな印象だ。今、売れない芸人を描くことがどれだけリアルに響くのかなという疑問もあった。

 でも、目線を変えてみた。芸人モノではなく、「27~28歳の非正規雇用の人々の今」として観始めたら、途端に面白くなってきた。「そうそう、まがりなりにも芸能界に属している人は基本的にサービス業に向いているから、バイト先から誘われるよねぇ」とか「彼女が一流企業に勤めるリーマンだと、言葉には出さないが卑屈にはなるよねぇ」とか「夢破れたときに継ぐ家業があるって、逃げ道のように見えて実は地獄の入り口だよねぇ」とか「きょうだいに引きこもりというかドロップアウトした人がいるって、案外多くて社会問題だよねぇ」とか。約20年前にこの年齢だった自分を振り返って、平成と令和の差や感覚のズレを噛みしめたりもして。

 さらには、女性陣のほうも精神的に深爪状態というか、若いのに、いや、若いからこその苦悶を抱えている。世の中に対してガサツに爪を立てることなど到底できず、かといってピカピカに磨き上げて美しく飾り立てる性分でもなく。「これではシールすら剥がせませんね」くらいに爪を噛んじゃって、そんな無害な自分をどこかで不甲斐なく思っているような女性たち。

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