東京五輪、開催すれば地獄? 陽性者の対応、デモ対策などを徹底シミュレーション

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コロナ禍で催す意義

 ここに及んで、“中止やむなし”、と思う読者もいるかもしれない。だが、もう一考いただきたい。

「感染防止対策に反する行動をした場合、今のプレイブックではメダルが剥奪される“可能性がある”といった弱い表現に止まっていますが、第3版ではもっと強い表現になるはずです」

 と元JOC参事でスポーツコンサルタントの春日良一氏が説明する。

「メダル剥奪は、人生を賭けてスポーツに打ち込んでいる者にとっては“死ね”と言われるに等しいんです。強い強制力になりますよ」

 他にもやれることはある。

「“ファミリー”や“パートナー”は限りなくゼロに近づけてほしい。彼らも“こういう状況だから今回は遠慮して”と言えばわかってくれるでしょう」

 とスポーツライターの小林信也氏が後を継ぐ。

「選手のインタビューなどなるべくリモートで取材する態勢を整えれば、報道陣も削減できる。ロッテの清田(育宏)のように罰則を設けても破る不届き者はいるでしょうが、かなり抑え込むことはできるはずです」

 そして、陽性や濃厚接触の判定で試合に欠場する選手が出ることについて、

「昨年末の高校バスケ選手権で、関係者に陽性判定が出た学校があったのですが、何とその学校と対戦して勝ち上がった学校まで濃厚接触の恐れがあるとして棄権を余儀なくされたんです。こういう状況なので、“残念ながら――”と言う他ありません。ですから私は“今回の五輪は金メダル争奪戦ではない”と言いたい。近代五輪の祖クーベルタンが唱えた“参加することに意義がある”ではないですが、こんな状況でスポーツができる喜び、観る喜びを分かち合う大会と捉えてはいかがでしょうか」(同)

 多くの真面目な外国人選手にとって入国時の諸制約は大きなハンデとなる。都合、圧倒的な地の利がある日本は金メダルを量産するだろう。だが、そんなことで一喜一憂しないことだ。

 1964年東京五輪を記録した「東京オリンピック」という映画がある。アベベや“東洋の魔女”ら金メダリストも登場するが、分け隔てなく声援を送る観衆の姿が印象に残る。やってみれば、2020東京大会も意外とそんな展開になるやもしれない。

週刊新潮 2021年6月3日号掲載

特集「やったら『地獄』!? 驚愕シミュレーション 土壇場の『東京五輪』にこれだけの“ハードル”」より

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