大分で起きた“村八分”事件 被害者が語る“集落の人達がやった嫌がらせ”の中身

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 5月25日、大分県宇佐市の山里にUターンした亀山義勝氏(72)=仮名=が8年間“村八分”にされたとして訴えていた裁判の判決が大分地裁中津支部であり、被告3人に計143万円の支払いを命じた。今どき、なかなか聞かない“村八分”の中身とは?

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 亀山氏が「村八分にされた」として宇佐市と自治会の元区長3人を提訴したのは2018年10月のこと。精神的な苦痛を受けたとして、計330万円の損害賠償を求めたが、判決では自治会の元区長3人に約110万円の賠償を命じ、そのうちの1人に対して、亀山氏の通行を妨げる嫌がらせをしたとして、さらに33万円の支払いを命じた。ただし、自治区長は市の被雇用者に当たらないとして、市への請求は棄却された。

 亀山氏は宇佐市出身。兵庫県で公務員として働いた後、2009年5月、定年退職を機に兵庫に妻を残し、母親の介護のために単身で実家に戻った。

“村八分騒動”が起こったのは、宇佐市内を通る国道387号線沿いの山裾にある、民家わずか14戸という小さな集落だった。

中山間制度がきっかけ

「最初は、集落のみなさんと仲良くやっていたんですけどね」

 と振り返るのは、亀山氏。

 亀山氏の母親が亡くなったのは2011年12月。翌12年4月の自治区の会合で亀山氏は、母の後を継いで自治区に加わりたいと申し出ると、その場で加入が認められた。集落の長老も当初は、喜んでいたそうだ。ところが、

「2013年3月のことでした。たまたま、集落で中山間地制度に関する会合があったことを知りました。そこで私は、当時の区長に『昨日の会合はどういうものだったんですか?』と尋ねました。ところが、『あなたには関係ないことだから』と言って何も教えてくれません。『どういう制度なのか』と聞いても、あやふやな答えをするだけでした」

 亀山氏は、中山間制度がどんなものか調べてみた。市役所にも問い合わせたという。これが集落の人たちの気に障ったようだ。中山間制度とは、

「正式には中山間地域等直接支払制度といって、国が行っている農業政策の一つなんです」

 高齢化が進む集落などで農業を維持するために、国から補助金が支払われるという制度だ。農作業に関わる人がグループを作り、国に申請。亀山さんの集落が所属しているグループには年間約300万円が交付され、半分はグループが共有で使用、残る半分は耕作地の広さに応じて個々に支払われる。

「1反につき2万1000円の交付金が支給されます。私の所有する畑は3反でしたから、年に6万3000円支給されるはずでした」

 亀山氏の母親は、2010年まで自身の畑を知人に貸していたため、交付金は知人に支給されていた。ところが、11年から自分で耕作することにしたのに、交付金は依然として知人に支払われていたという。不審に思った亀山氏は、市に説明を求めた。

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