大分で起きた“村八分”事件 被害者が語る“集落の人達がやった嫌がらせ”の中身

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関係者以外立入禁止

「そこで、中山間制度のメンバーと話し合いの場をもうけました。そこには私の知らない人間(役所の立会人)が何人も来ましたが、議長役が中山間制度の代表者にされてしまったのです。これじゃあ公正な話し合いはできません。結局、物別れで終わりました。私は別に交付金がほしかったわけではありません。この制度がしっかり運用されているのか、確かめたかっただけなんです」

 すると、2013年の4月7日の集落の会合で、亀山氏は自治区のメンバーから外され、村八分が始まったという。

「今まで仲良くしていた人でも、『話をすると怒られちゃうから』と言われて話をしてくれなくなり、挨拶をしても無視されるようになりました。市報も配られなくなりました。ある日、いつも被っていた帽子をどこかに忘れてしまい、ようやく見つけたと思ったら、ハサミか刃物でズタズタに切られていました」

 自宅の庭のまわりに張り巡らしたイノシシ除けのネットが切られることも。

「柿の木も20カ所も傷をつけられ、コールタールが塗られていました。そのため枯れてしまいました」

 2016年11月には、きわめて陰湿な嫌がらせがあった。

「私の畑に続く道の中央に赤ペンキで線を引き、左側に『私道』、右側に『市道』と書かれました。そんなこと書かれたら、車は走れません。また、畑へ通じる道に『進入禁止』と書かれたコーンが置いてあることもありました」

 これが判決にあった、亀山氏の“通行を妨げる”嫌がらせである。

 さらに、亀山氏は馴染みの商店主から、「もう店に来ないで」と言われた。その直後、商店の店頭には『関係者以外立入禁止』の紙が張られたという。

 2017年11月、亀山氏の申し立てを受けた大分県弁護士会が「人権侵害」を理由に、自治会に対して是正を勧告した。ところが自治会が無視したことから、2018年に提訴したという。元区長らの訴訟費用として、他の住民たちは1世帯10万円を出し合ったという。

「昨年11月に原告と被告の証人尋問が行われた後、裁判官が和解案を出してきたのです。私は、元区長らが謝罪してくれたら応じますと答えました。ところが被告側から謝罪はしないと言われました。それどころか、私が謝罪したら和解すると主張するので、判決を出してもらったわけです。今回の判決で、自分は間違ってなかったことが認められて満足しています。控訴されても、最期まで戦うつもりです。私はここを出ていくつもりはありません。出て行ったら私の負けですからね」

「今も集落の人に会って気まずい思いをするのが嫌だから、朝早くから家を出て、ドライブしたり遠くの図書館に行ったりしています。そして、日が暮れたら帰って来るという生活です。これなら集落の人と顔を合わすこともありませんからね」

デイリー新潮取材班

2021年6月2日掲載

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