少女への性的虐待の実態 チェコの衝撃ドキュメンタリー「SNS-少女たちの10日間-」が暴いた現実

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 全国順次公開中のチェコのドキュメンタリー映画「SNS-少女たちの10日間-」は、SNSで繰り返されている少女たちへの性的虐待の様子を可視化し、当地の警察をも動かした問題作である。が、我が国では映画より巧妙な手口で、少女たちが被害に遭っている――。

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「百聞は一見にしかず」という手垢のついたことわざ以外に、この映画に相応(ふさわ)しい言葉を思いつけない。何しろ、スクリーン上に描かれるのは「SNSの害悪」そのもの。理性のリミッターが外れてしまった男たちの醜悪な姿が、これでもかと映し出されるのだ。

 全国順次公開中のチェコの映画「SNS-少女たちの10日間-」。このドキュメンタリーの舞台は、巨大な撮影スタジオに設営された三つのリアルな子供部屋である。そこで12歳の少女になりきってパソコンの画面と向き合うのは、実際は18歳以上の幼い顔立ちの女優たち。偽のSNSアカウントを作成した彼女らと、接触してくる人物とのやり取りを撮影していく――という「社会実験」を進めるにあたって、監督たちはいくつかのルールを設けている。

・自分からは連絡しない

・12歳であることをハッキリ告げる

・誘惑や挑発はしない

・露骨な性的指示は断る

・何度も頼まれた時のみ裸の写真(偽の合成写真)を送る

・こちらから会う約束を持ちかけない

・撮影中は現場にいる精神科医や弁護士などに相談する

 万全なバックアップ態勢のもと、SNS上に登場した「12歳の少女」3人。結局、10日間で2458人もの成人がコンタクトしてきたが、彼女たちが自身の年齢を「12歳」と告げても、ほとんどの男は「気にしない」「関係ない」と意に介する様子はない。それどころか、「スカイプ」を通じて彼女たちとパソコンの画面越しに会話する男たちの多くは、カメラに写らないところで自慰行為に励んでいる。露出した自分の性器をいきなり画面越しに見せつけたり、性器の写真を一方的に送り付けたりする男も少なくない。SNSの闇世界がいかに“露出狂”で溢れているかがよく分かり、見る者をげんなりさせる。

 やりとりを続けるうちに「裸の写真」を送るよう要求してきて、実際に写真(偽の合成写真)を送信すると、それを勝手にSNS上にアップして脅し始める男も。相手が「子供」だからとなめてかかっているのか、欲望をむき出しにする男たちに警戒するそぶりは全く見えない。映画では、彼女らと男たちが街中で直接顔を合わせる場面も撮られている。その際、裸の写真を元に脅したことについて難詰された末、レモネードをぶっかけられた“恐喝男”は「仕方ない」と呟き、そそくさと店を後にする。そのシーンを見る限り、自分の行動が道を外れたものだという自覚はあるのかもしれない。

実刑判決が下された

「今公開されているバージョンを見て下さった方から、登場する男性たちや、その行為がすごく気持ち悪いという声を多く頂いていますが、実はあれでも日本で独自にかなりモザイクをかけているのです」

 と、配給会社の担当者。

「チェコで公開されたバージョンそのままだと、日本ではR-18になってしまう。私たちとしては18歳未満、少なくとも高校生には見てもらいたいという希望があったので、R-15にもっていくため、日本の映倫の基準に沿って、独自にモザイクをかけたのです」

 この映画のパンフレットにコメントを寄せている、エッセイストの小島慶子氏は、

「印象的だったのは、加害男性の目と口にぼかしがかかっていなかったことです。顔全体を隠すと加害者の加害性が抽象化されてしまうと思うので、斬新かつ効果的な手法だと思います」

 とした上でこう評する。

「少女が性的に搾取される事件だと、それを報じる記事自体をポルノ的に読む人が出てきますが、この映画は被害者視点ではなく、実験を一緒に見届ける形式であるためか、ポルノ的な見方が全くできない。制作者サイドはその点をかなり意識したはずです」

 子役時代からネットで積極的に発信してきた“はるかぜちゃん”こと俳優の春名風花氏もパンフレットにコメントを寄せた一人だ。

「この映画で描かれている内容は、子供の頃からインターネットを使っているぼくにとっても想像以上でした」

 と、春名氏。

「映画に出てきた男の人たちは、幼い女の子相手に興奮しているわけではなく、幼い子供ならやられていることの意味が分からないので、騙しやすい、勢いで押し通せる、と分かっていてやっているんだろうな、と思いました」

 映画の制作者サイドは撮影が終わった後、その「実験結果」を警察に提出。捜査の結果、男たちが社会に「実在」する少女たちに対しても同様の違法行為をしていることが発覚し、逮捕者が続出した。

 この映画のエグゼクティブ・プロデューサー、チェコ人のパヴラ・クリメショヴァー氏が語る。

「結局、52人の男と1人の女に対する捜査が行われ、そのうち8件で実際に子供への性犯罪が認められました。映画に登場する、最もタチの悪い性的搾取者には、児童ポルノ所持などの罪で懲役2年の実刑判決が下されました。こうしたことは、我々の撮影結果が単なる偶然ではなく、実際に子供に被害が及んでいることを示しています」

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