コンパニオンの告白 コロナでイベントは激減、OL転職組もゼロからスタートの二重苦

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新型コロナウイルスの拡散が止まる目処は立たず、東京都をふくむ地域で発令されている3度目の緊急事態宣言は、来月20日まで延長されることが決まった。集客型のイベントや展示会は、入場者5000人未満もしくは収容定員50%以下のいずれかの小さい方の基準を満たせば観客を入れて開催可能。とはいえ、中止や延期を決断するイベントは多い。

 しかも緊急事態宣言が明けたからといって、ワクチン接種が進んだわけではなく、すぐに客足が戻るわけではない。今秋に予定されていた東京モーターショーは67年の歴史上初となる中止を4月に決断。同じく秋に開催していた東京ゲームショウも、昨年に引き続きオンライン開催を決めており、他のイベントについても先行きは不透明だ。

「もう絶望です。私たちの仕事自体がコロナでこの世からなくなるのではと思ってしまいます」

 そう語るのはイベントコンパニオンとして活動する皆月沙耶さん(26)。コロナの影響により飲食店や宿泊業の危機は連日メディアで報じられるが、イベントに花を添える彼女のような存在もこのコロナで未曾有の危機を迎えている。

 もともとバレエダンサーだった皆月さんは、2017年末に「同じ人に見られる仕事」という共通点からイベントコンパニオンに転身。以後は専業でこの仕事をしてきた。

「月によってばらつきはありますが、週5日は仕事があり、月で25万円くらいは稼いでいました。繁忙期は2週間連勤もありましたし、月45万円もらえたことも。十分に生活できていました」(皆月さん)

 ただ笑顔で立っているだけと思われるかもしれないが、ブースに来てくれる人とどうコミュニケーションを取るかを常に考えるのがコンパニオンの仕事。皆月さんはそこにやり甲斐を感じ、クライアントからの信頼も積み重ねていた。しかし、新型コロナがその生活をすべて壊していった。

 予兆を感じたのは2020年2月末ごろだった。

「最初にキャンセルになったのは、その年の2月末に開催予定だった東京マラソン関連のイベントでした。そこから2カ月の間に、徐々に徐々に3月の仕事がキャンセルになっていき.……。精神的にきつかったです」(皆月さん)

 結局キャンセルになったイベント数は10。日数にして26日分の仕事が消えた。危機を感じた皆月さんは、3月のうちにカフェのアルバイトの面接を受け、アルバイトを始める。しかし4月7日、1回目の緊急事態宣言が発令されるとそのアルバイトもなくなってしまう。

 キャンセルでなにかしらの補償はなかったのだろうか。

「ちゃんとしたイベント事務所だと、直前キャンセルになった場合は50%のギャラが出るというポリシーがあるのですが、実際にもらえたのは1回だけです。あとのイベントは10~20%もらえればいい方で、他はなし崩し的にもらえませんでした」(皆月さん)

ギャラは1万円前後に

 5月25日に1度目の緊急事態宣言が解除されたが、仕事はすぐには戻らなかった。給付金に関する行政の仕事にスタッフをして関わり、なんとか生活していた皆月さんにコンパニオンの仕事が入ったのは10月になってから。待ちに待った仕事だったが、以前とは様子が違っていた。

「イベントコンパニオンの案件自体が本当に少なくなりましたし、展示イベントに出店する企業が減り、出店してもコンパニオンを使わないというブースが増えました。なので仕事の総量は例年の半分以下になりました」

 少ない仕事をコンパニオンたちが取り合うため、当然競争率は激しくなる。そうした状況はさらに彼女たちを苦しめた。

「激戦だし、みんな仕事がないのがわかっているから、コロナ前に比べてギャラがものすごく安くなっていたんです。コロナ前の展示会の相場は1日あたり1万4000円。それが1万円前後まで下がっていました」

 求人が少ない中、採用されるのはこれまで企業からの信頼を得てきたベテラン中心になっていった。

「毎週のように同じ顔ぶれが展示会場にいて『本当によく会うね』ってお互い言ってました。その裏には、緊急事態宣言でイベントコンパニオンを辞めた人が多かったというのもあると思います」(皆月さん)

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