「松中造反」「中日内紛」「ファンの抗議行動」…交流戦3大事件はなぜ起こったか

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“瞬間湯沸かし器”の異名

 一方、中継プレーをめぐり、試合中にもかかわらず、ベンチで選手といざこざを起こしたのが、“瞬間湯沸かし器”の異名で知られる中日・高木守道監督だ。

 13年5月14日の日本ハム戦、1点リードの中日は7回2死二塁、稲葉篤紀に中前タイムリーを許し、4対4の同点に追いつかれた。センター・大島洋平のダイレクト返球が本塁手前でスリーバウンドする間に、二塁走者・西川遥輝の生還を許したもので、中継がスムーズに行われていれば……と惜しまれる場面だった。

 騒ぎが起きたのは、中日ナインがベンチに引き揚げてきた直後。高木監督がショートの井端弘和に「お前がカットすれば間に合っていた」と指摘すると、井端は「(ファーストの)クラークが入るべきでは」と反論。同年の中日は、このようなケースでは、一塁手が中継に入るフォーメーションを練習しており、キャンプでもやっていないプレーで責任を追及された井端は、不服そうに帽子を脱ぎ捨てると、ベンチ裏に姿を消した。

 すると、高木監督は、怒りの形相もあらわに井端を追いかけようとしたため、慌てた捕手の小田幸平らが数人で制止した。この一部始終がテレビで放映されたため、「内乱発生?」「井端vs守道」などのタイトルで動画が拡散され、多くのファンが目にすることになった。

 報道陣に井端とのトラブルについて質問された高木監督は「指摘をしただけのことや。(トラブルを誘発)そんなことは言いません」と不機嫌な表情で否定。一方、井端は「クラークが入れないので、僕が入らないといけなかった」と大人の対応を見せた。

 事の理非は別にして、いつ何時テレビカメラが回っているかわからないご時世だけに、試合中の指揮官は、常に泰然自若としているのが良さそうだ。

セレモニーをボイコット

 不本意な代打起用に不満を抱き、交流戦優勝セレモニーの参加をボイコットしたのが、ソフトバンク・松中信彦だ。13年6月13日のヤクルト戦、ソフトバンクは11対4と大勝し、2年ぶり4度目の交流戦Vを決めた。

 ところが、試合後に行われた優勝セレモニーで記念撮影に収まるナインの中に、松中の姿はなかった。実は、この試合での起用法に納得できず、「水を差して申し訳ありません。また頑張ります。リーグ優勝に向けて頑張ってください」という謝罪文をホワイトボードに書くと、荷物をまとめて帰ってしまったのだ。

 問題のシーンは、ソフトバンクが8対4とリードした8回。1死から細川亨の代打で登場した松中は、ダメ押しの3得点の呼び水となる中前安打を放ったが、内心は怒りで一杯だった。

 5回を終わって6対0とリードした時点で、「今日(の代打)はない」と言われたのに、前言を翻されたことに我慢がならなかったのである。

「1打席1打席、打てなかったら引退という思いで1軍に上がってきて、たとえ10点差でもどんな場面でも行くと決意でいた。『ない』と言われたので、準備せずに行くことになった。プロ17年間、しっかり準備する気持ちだけは欠かさなかった。そこは譲れない部分だった」というのが理由だ。

 この行動は、当然、秋山幸二監督の逆鱗に触れ、松中は男の意地を貫き通した代償として、シーズン終了まで2軍で過ごすことになった。

 蛇足だが、こんな騒動もあった。17年6月6日のオリックスvs阪神では、「飲み放題チケット」で飲み過ぎたファン13人が急性アルコール中毒で倒れ、救急車7台が出動している。

 コロナ禍で自粛ムード一色の今となっては、いずれも“平和な時代”ならではの事件にも思えてくる。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年5月27日掲載

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