五輪選手を悩ませる「ワクチン問題」 不公平と感じる人がしている勘違いとは

スポーツ 週刊新潮 2021年5月20日号掲載

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「アスリートが“踏み絵”を踏まされていますね」

 とスポーツライターが苦笑する。

 先ごろ、国際オリンピック委員会(IOC)は、米ファイザー社らから東京五輪出場選手のための新型コロナワクチンの提供を受けることで合意したと発表した。

 これを受けて、五輪出場が予定されるアスリートの会見では、記者からの“ワクチンを接種するか”“国民の不公平感についてどう思うか”という質問がお約束になっているというのだ。

 どう答えてもケチがつく。まさに踏み絵である。そのため、柔道の会見では事前に“ワクチン関連の質問はNG”との通達があり、空手の会見では司会者が記者にこの種の質問を控えるように注意したのだとか。

「五輪開催可否についても似たようなもの。“開催してほしい”と本音を言えば最後、ネットで袋叩きに遭うこと必至ですから」(同)

 それはさておき、“五輪ワクチン”を不公平と感じる向きは勘違いしている。

 そもそも、その1。選手たちはワクチンを打ちたがっていない。

 例えば今月8日に行われた陸上選手たちの会見はこんな具合だった。

田中希実選手(21) 個人としてはまだ少し怖いかなというのはあるんですけど。

新谷仁美選手(33) 他の人に危険が及ぶのであれば打ちます。ただ、打ったことでの症状が異なっているので、そういう面では正直なところ恐怖もあって(略)打ちたくないなという気持ちがあります。

 これまで「一日も早く接種したい」と答えたのは、アーティスティックスイミングの井村雅代ヘッドコーチ(70)くらいで、空手の組手女子61キロ級内定の染谷真有美選手(27)に至っては、

「自分からワクチンを打とうという意思はなくて。それがルールなら従おうという気持ちです」

 とイヤイヤ感を露わに。さらに“副反応を恐れているのか。世間が言うように優先すべき人がいるからか”と問われるや、

「特に世間の声ではなくて、わざわざリスクを冒さなくてもいいかなと」

 とワクチンに対する不信感を隠さなかった。

 そもそも、その2。ファ社らはIOCにワクチンを提供するのであって、日本に提供するわけではない。

 前述した陸上選手の会見で、いみじくも寺田明日香選手(31)はこう語った。

「私たちがワクチンを断りますと言って、それが皆さんに当たればすごく嬉しい話ではあるんですけど、そういうことは叶いません」

 選手が一般向けのワクチンを掠(かす)め取っていると考えるのは大間違いなのだ。