大半が2年で消える「K-POP」アイドルグループの熾烈なキャラ戦略 BTSが使った「黄金の一手」とは

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 K-POPでは毎年100組近いアイドルグループがデビューし、その多くが2年と持たないといわれている。アイドルの入れ替わりが激しすぎるそんな韓国では、グループの明確な差別化は必須。しかも、カムバック(註:新曲発表後の活動期間)ごとに大きくイメージを変えるのが定例なので、曲を出すたびにスタイルや音楽性を刷新しつつ、グループらしさを確立するという超難題が存在するのだ。年々複雑化するK-POPアイドルのコンセプト設計について、韓国の雑誌社でデザイナーとして勤務、現在はライターでもある田中絵里菜さんの著書『K-POPはなぜ世界を熱くするのか』(朝日出版社)から抜粋して紹介する。

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 K-POPでは毎年100組近いアイドルグループがデビューし、その多くが2年と持たないといわれている。アイドルの入れ替わりが激しすぎるそんな韓国では、グループの明確な差別化は必須だ。しかも、カムバック(新曲発表後の活動期間)ごとに大きくイメージを変えるのが定例なので、曲を出すたびにスタイルや音楽性を刷新しつつ、グループらしさは確立してファンをさらに獲得していかなくてはならない。そんな超難題を受けて、K-POPアイドルのデビュー時のコンセプト設計が年々複雑化している。

「コンセプトドル」の出現

 K-POPライターのパク・ヒアさんによると、K-POPアイドルに「グループコンセプト」が目立つようになってきたのは、「コンセプトドル」の異名を持つVIXXやB.A.Pがデビューした2012年頃だという。VIXXは新曲を出すたびに劇的なイメージチェンジを繰り返し、K-POPアイドル界においても目を引く強い物語性を持ったグループとして話題になってきた。特に2013年に発売された「傷つく準備はできている(다칠 준비가 돼있어)」では、「ヴァンパイア」をコンセプトに、猫の目のようなカラーコンタクトレンズに濃いシャドーを塗ったインパクトあるアイメイクを施して、グロテスクな様相でカムバックした。

 コスプレともいえるくらい作り込まれたビジュアルとパフォーマンスは音楽番組で話題になり、ファンが増える大きなきっかけになった。VIXXはその後もカムバックごとに「サイボーグ」「愛の奴隷」「調香師」などをコンセプトにし、長編小説や映画をまるごと味わうかのような曲の世界観を完璧なまでに表現している。同じくコンセプトドルのB.A.Pの場合は、「不条理な地球を征服するために宇宙から来た戦士」というコンセプトで2012年にデビューし、メンバーそれぞれになぜかウサギのキャラクターが作られた。太陽系外惑星を意味する「Exoplanet」から名付けられたEXOも、2012年に「未知の世界から来た新たなスター」というコンセプトのもとデビューし、メンバー全員に「水」「治癒」「瞬間移動」などの超能力が設定として与えられ、それがメンバー同士で対になるといった凝りようだった。

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