水際対策「14日間自主隔離」の抜け穴 “スマホ2台使い”で外出した「違反者」の告白

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家族にスマホを預けて外出

 いよいよ、ここから隔離生活となる。だが、彼はなるべく自宅にいるようにしたものの、自粛期間の後半、どうしても仕事に出なければならなかった時、何度か外出してしまったという。いったいどのように監視を切り抜けたのか。

「同居している家族にスマホを預けたのです。一番の難関は『OEL』でした。早くて午前10時、遅い時は午後9時くらいといった感じで、毎日ランダムな時間に通知が来るので予測はできません。ただ、私の家族はほとんどの時間、在宅していたのでいつでも対応できました。通知が来たら、『今ここ!』のボタンを押してもらうだけです」

 だが、いまや日常生活に欠かすことができないスマホなしで、不便は生じなかったのだろうか。男性はこう言う。

「使用していなかった古いスマホにSIMカードを入れ替えて持ち歩いたので、まったく支障がありませんでした」

 空港では、ちゃんとスマホにアプリがインストールしているか係員が確認するというが、実はこんな“抜け穴”があったのである。センターからかかってくるというビデオ通話についても、

「実はこれは、ほとんどかかってこない。どうやら、『OEL』の返事をしないなど違反が疑われる人を対象に絞ってかかってくるとのこと。実際は1回だけかかってきましたが、その時は在宅していたので問題ありませんでした。1分くらい、『ちゃんと隔離生活を送っていますか』と聞かれて『はい』と答えるだけ。毎日午前11時に届く『健康確認メール』は、毎日忘れずに返事をすれば良いだけでした」

水際対策強化に立ちはだかる「移動の自由」

 言うまでもなく、男性の行動は誓約違反であり、社会人として決して許されるべきものではない。だが、今の水際対策では、このようにいとも簡単に監視から切り抜けられてしまうのだ。

 シンガポールなど強制隔離を行ない、違反すると実刑や罰金を科される厳しい国もあるが、日本では違反したとしても氏名が公表されるだけだ。しかも、まだ1件も実行に移されていない。

 入国者健康管理センターを管轄する厚労省に話を聞いた。

「確かにイタチごっこになっている現状があります。1日あたりの監視対象が約2万人で、それを監視するスタッフは約300人。監視する業務がどんどん増えていき、追いついていない。今も1日あたり100人くらいの違反者がいます。ただし、憲法で『移動の自由』が保障されている以上、罰則を負わせることが難しいのです。国内で感染した人にも自宅待機を強制していないのに、陰性証明書を持って入国時に陰性だった人に対してだけ強制できるのか、という議論もあります」

 ただ、今後は強化していく方針だという。

「これから違反者には、氏名公表の警告メールを送信する予定です。氏名を公表する場合は、居住の都道府県、性別、年齢くらいは出るかもしれません。委託業者に違反者の自宅訪問をしてもらう対策も始めましたが、プライバシー保護の観点から進んでいません」

 市中ではインド変異株が猛威をふるい始め、ワクチン接種も一向に進んでいない。こんな生ぬるい水際対策で、日本はコロナ禍から抜け出すことができるのか。

デイリー新潮取材班

2021年5月17日掲載

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