水際対策「14日間自主隔離」の抜け穴 “スマホ2台使い”で外出した「違反者」の告白

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出費は往復のPCR代3万円だけ

 さすがは、ワクチン接種が進んでいるアメリカ。日本とはえらい違いである。実際、ラスベガスにはアメリカ中からの旅行客が押し寄せ、活況だったという。

「外ではマスクをしないで歩いている人も目立っていました。私と同じような日本人観光客とも何人かすれ違いました」

 そうして、1週間あまりの休暇を楽しんだ男性だったが、いざ帰国するとなると、緊張してきたという。

「日本の入国のほうが厳しいからです。また、無事帰国できたとしても、14日間の自主隔離をどうクリアするかが悩みのタネでした」

 当然だろう。1週間の海外旅行が楽しめたとしても、帰国してから14日間、自宅に籠るとなれば観光気分もそがれてしまう。しかも、男性の場合は、

「ウチの会社は半分テレワークといった勤務体系で、週に何日かは出社しなければなりません。会社には内緒の旅行だったので、それをどう切り抜けるかが難題でした」

 とはいえ、まずは帰国するために飛行機に乗らねばならない。出国同様、帰国の際も現地で取得した陰性証明書が必要だったが、事前にネットで調べていたクリニックを訪ねると、1時間くらいで簡単に取得できたという。費用は150ドル。

「今回の海外旅行はいろいろな意味で“ギャンブル”でしたが、感染しないことが大前提だったので、検査結果の“negative”の文字を見てほっとしました。これが陽性だったら、飛行機にすら乗れませんでしたからね。なお費用面で言うと、行き帰り2度のPCR検査費用、計3万円が加算されるだけでした。ただ、飛行機はガラガラで、エコノミーでも3列シートで横になれたので、そんなに損した気分ではありませんでした」

自主隔離を監視する3つのツール

 こうして無事、羽田空港にたどり着けたが、“第二の関門”が待ち受けている。まず現地で取得してきた陰性証明書と飛行機の中で配布された「誓約書」を提出。誓約書では、入国後14日間、自宅や宿泊場所などで待機することや、後述するアプリをインストールして報告を怠らないことを誓約させられる。

 その後、改めてのPCR検査となる。費用は無料。当然、ここで万一「陽性」となれば、即ホテルなどでの強制隔離だ。

「渡された容器に唾液を流し込み、係の人に手渡します。検査結果は1時間ほどで出るのですが、その間、さまざまなブースを周り、スマホにいくつかのアプリをインストールする手続きなどをさせられます」

 まず入れさせられるのが、位置情報確認アプリ「Overseas Entrants Locator(OEL)」。自主隔離期間中、1日に2〜3回、通知が来る度、アプリを起動させ、「今ここ!」と表示されるボタンを押さなければならない。ボタンを押すと、スマホの位置情報が隔離生活を監視する機関である「入国者健康確認センター」に送られる仕組みとなっている。押さないで無視したり、申告した住所と違った場所で押したりすると、「誓約違反」となる。

 次が「Skype」や「WazzUp!」などのビデオ通話アプリ。今年3月から新たに水際対策を強化するために導入されたもので、センターの担当者が、ちゃんと入国者が隔離生活を送っているかを確認するためのものだ。

 さらに「健康確認メール」の送り先となるメールアドレスを提出する。「健康確認メール」は毎日午前11時に届き、「発熱があるか」など簡単な質問に答えるもの。午後2時までに返信しなければならない。

 この3つが、隔離生活がちゃんと実行されているかを国が監視するツールだ。新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA」も入れさせられるが、特に使われることがないという。男性は出発前にすべてのアプリをインストール済みだった。改めて係員からアプリなどの使い方の説明を受け、報告を怠らないと誓約。やがて、空港の検査も陰性と出たので、帰路についたのだった。

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