事件現場清掃人は見た ゴミ屋敷の押し入れになぜ「60代男性」のミイラがあったのか

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 孤独死などで遺体が長時間放置された部屋は、死者の痕跡が残り悲惨な状態になる。それを原状回復させるのが、一般に特殊清掃人と呼ばれる人たちだ。長年、この仕事に従事し、昨年『事件現場清掃人 死と生を看取る者』(飛鳥新社)を上梓した高江洲(たかえす)敦氏に、あるゴミ屋敷でした“恐怖の体験”について聞いた。

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 特殊清掃の現場では、ゴミの山から想像もしなかったもモノが出てくることがあるという。高江洲氏がいう。

「大量の抗うつ剤が出てきたことがありました。本人が服用するだけでなく、ネットで販売して生計の足しにしていたようです。大量のゴミの中から拳銃がでてきたこともあります。最初はモデルガンかと思いました。銃口を見ると塞がれてなかったので、慌てて警察に連絡しました。おまけに、私の指紋しか検出されなかったため、警察から事情聴取を受けるはめになりました」

押し入れの下の段に真っ黒いものが

 もっとも、この程度はまだまだ序の口である。

「不動産屋から、『住人が夜逃げしたようなので残置物を処分して欲しい』と依頼がありました。あの時の驚きは、今でも忘れられません」

 現場の状況についてこう話す。

「間取りは2Kでした。奥の6畳の和室と、手前のキッチンは食べ物などの生活ゴミが天井近くまで積み重なっていました。6畳とキッチンに挟まれた4畳半の和室にはゴミがなく、ゴミの山の谷間のようでした。おそらく家人はそこで生活していたのでしょう。トイレにもゴミが便器の高さにまで積まれていて、ドアが閉まらないほどでした」

 高江洲氏はスコップでゴミを掘って、ゴミ袋に入れるという作業を繰り返した。

「玄関やキッチンを先に片付け、まずゴミ袋の置き場所を確保します。置き場がなくなったらトラックの荷台に運びます。これまで1回の清掃で、2トントラック10台分のゴミが出たこともあります」

 なんとかゴミの山を片付け、残るは押し入れだけとなった。

「4畳半の和室に、1間半(約2・7メートル)の押し入れがありました。とりあえず襖を開けると、下の段になにか真っ黒な塊を見つけました。よくよく見ると、ミイラ化した人間の遺体が……」

 さすがの高江洲氏も震え上がったという。

「すぐに警察に通報しました。事件現場では、事前に警察が来ているため、遺体に遭遇することはまずありません。その時は本当に驚きましたね。警察が来ると、私は容疑者扱いされて、事情聴取もされました」

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