反対する人は人を不幸にしている……「選択的夫婦別姓」推進派に奢りはないか

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朝日新聞デジタルの意識調査は「選択的夫婦別姓に反対」が過半数の55%

 朝日新聞デジタルは、令和2(2020)年12月24日から翌年1月7日にかけて「夫婦の姓、どう考えますか?」とのタイトルでアンケート調査を実施し、1万9000人以上の回答を得た。公表した結果によると、「選択的夫婦別姓導入」の賛否については、賛成が43.5%、反対はこれを上回る55.2%だった。前掲の『47都道府県「選択的夫婦別姓」意識調査』で発表された「選択的夫婦別姓賛成が7割」とはずいぶん異なる結果が出た。

 朝日の調査でも、設問に先だって次のような説明が文字で示された。「いまの法律では、結婚する男女のどちらかが相手の姓(名字)に合わせ、夫婦が同じ姓になります。望めば結婚後もそれぞれの姓でいられる『選択的夫婦別姓』は久しく検討課題となってきました。いま再び政治や司法の場で議論が動き出しています。姓をどうするかは個人の生き方にかかわります。あなたはどう思いますか」。しかし、読めばわかるように回答を誘導するような文言はない。新聞社らしい公平な内容であったと思う。

 ところで、内閣府は平成29(2017)年12月に選択的夫婦別姓に関する世論調査を行っている。その結果は、「別姓」を名乗ることを認めるとの回答が42.5%だったのに対し、夫婦は「同姓」を名乗るべきだという回答が過半数の約54%を占めた。朝日デジタルの調査は、奇しくもこの3年前の世論調査とほぼ同じ結果となった。しかし、朝日以外のメディアでこれが話題になることはなく、前掲の参議院の法務委員会での審議で取り上げられることもなかった。

 朝日の調査にはこんな設問もあった。「夫婦の姓と結婚手続きは、子どもの姓や法的権利にも関係してきます。家族と姓について、あなたの考えに近いのはどれですか」。

 選択肢は5つで、結果は(1)「家族は同じ姓、同じ戸籍であるべきだ」(52.4%)、(2)「家族は同じ姓、同じ戸籍がいいが、通称使用を法制化してもよい」(4.6%)、(3)「夫婦それぞれの姓が法的に認められれば、戸籍は家族単位でいい」(9.8%)、(4)「家族それぞれに個別の姓が認められれば、戸籍は家族単位でいい」(11.1%)、(5)「家族単位の戸籍はやめて個人登録制度にするべきだ」(20.8%)、(6)「その他」(1・2%)となった。ここでも、選択的夫婦別姓の賛否と同様に、(1)と(2)を合わせた「家族は同じ姓」を望む人は57.0%と大きく過半数を占めた。

夫婦の意見が対立したら「子どもの姓」を家庭裁判所に決めてもらう!?

 選択的夫婦別姓に関するネット上の発信が増えている。その多くは別姓を推進する立場からの個人や市民グループによるもので、参考になる内容もある。しかし、このところ気になるフレーズが目立つ。前掲の福島瑞穂氏のような「誰かが損をするわけでも(ない)」という言い方や「反対する理由は何もない」という決めつけである。

 筆者も一時期までは、この問題にはそれほど関心はなかった。漠然と「どうしても別姓にしたい人がいるなら――」というぐらいにしか思っていなかった。しかし、昨年12月25日に政府が「第5次男女共同参画基本計画」を閣議決定。「選択的夫婦別姓(別氏)制度」の文言が削られ、「夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、更なる検討を進める」と書かれてマスコミが騒ぎ出したのをきっかけに、夫婦別姓論議の経緯などをいろいろ調べてみた。

 その中に、2009(平成21)年4月、当時の民主党や日本共産党などの所属議員が参院に提出した選択的夫婦別姓を求める「民法の一部を改正する法律案」があった。そこには、子の姓をどちらにするかについて「協議が調(ととの)わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、協議に代わる審判をすることができる」とあった。離婚訴訟などで親権をどちらにするかという問題ではない。生まれたばかりで何もわからない赤ちゃんを、司法の場に引きずり出すことになるかもしれないのだ。裁判官は何を基準に裁定するのだろう。どちらかの姓に決めることなど本当にできるのだろうか――。夫婦が対立するのは仕方がないにしても、結局は子どもが犠牲になってしまうのではないか。だが、夫婦別姓推進を熱心に説く人たちはそのことには触れようとしない。

 兄弟間や親子で姓が違う場合の子どもの不利益についても、家族に思いやりと愛があれば大丈夫だと言う。万が一、いじめがあったとしても、そういう社会環境を変えていけばよいのだと説く。

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