なぜ日本でワクチン接種が進まないのか 厚労省と利権を手放さない医師会が障壁

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今後の予定は

 また、茨城県日立市のワクチン接種対策チームは、

「高齢者用の300人分を医療従事者に転用する予定です。必要なだけのワクチンが届かず、接種を行う医療従事者にも未接種の方がいます。彼らが感染すると高齢者への接種も進まなくなってしまうので、転用することにしました」

 と、苦渋の決断について語る。ただし、

「5月上旬には、市内の医療従事者全員が2回打ち終わるだけのワクチンが届く予定にはなっています」

 と加えるのだが、それは本当に実現するのだろうか。厚生労働省健康局健康課予防接種室に聞いてみた。

「現在、国が供給しているワクチンはすべてファイザー社製で、1170回分が入った箱を、3月22日からの週と29日からの週に、それぞれ700箱ずつ、全国の医療従事者向けに送りました。4月5日からの週には、さらに高齢者に向けても100箱送りました。ただし、これは高齢者への接種の予行演習を兼ねたものでした。4月12日、19日からの週はそれぞれ1400箱ずつ、医療従事者向けに送りました」

 では、今後の予定はどうなっているのか。

「4月26日からの週、5月3日からの週で合わせて5741箱、5月10日からと17日からの週も、それぞれ計1万6千箱が全国の高齢者に向けて送られます。医療従事者に向けても、5月3日からの週に1200箱、次の週に2200箱が送られ、計算では、5月10日からの週までには、全国480万人の医療従事者全員に、ワクチンが行き届くことになっています」

医療従事者が明かす困惑

 むろん、厚労省が言うように、5月以降はワクチンが続々と届くなら、それでいい。だが、ほかならぬ厚労省も、これまでの状況に対しては、「単純にワクチンの総量が足りなかったということ」と、いわば白旗を掲げるのだ。

 当然の帰結として、コロナ禍における頼みの綱である医療従事者自身が、大きな不安を抱えてしまっている。ワクチンの供給が遅れている東京都台東区内に勤務する医療者が語る。

「私の病院は、4月15日にはじめてワクチンが到着しました。19日から接種が始まることになっていますが、16日現在、数百名の職員はだれも接種できていません。供給されてしまえば、1回目の接種は1、2週間で終えられると思います。しかし自治体によっては、12日には高齢者への接種が始まり、それを考えると、前線でコロナ患者さんと接する機会があるスタッフだけでも、早めに接種させてほしかった。院内感染が起きれば医療崩壊につながります。医療体制を保つためにも、第一線にいる方々が少しでも安心できる状況にすることが重要だと思います」

 ナビタスクリニック立川および新宿に勤務する内科医、山本佳奈さんの声にも耳を傾けたい。

「私は4月下旬から、新宿区と立川市、福島県南相馬市で、高齢者へのワクチン接種を手伝う予定です。ところが自分は未接種で、いつ接種できるかもわかりません。私が勤めているクリニック所属の医療従事者は、立川が30人ほどで、新宿は20人ほど。大きな病院に所属している人は、1回ないし2回の接種が終わった人が多く、私のようなクリニック所属の人はまだのようです。高齢者への接種が始まっているのに、発熱患者を診ている医師がまだなのは、おかしいと思います」

 こう話した後、4月27日に立川のクリニックにワクチンが届き、その翌日、接種できることになったという。とはいえ、綱渡りに変わりはない。

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