「太陽光の売電権」販売業者 “詐欺まがい商法”を行う社長が国税の ターゲットに

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高値の付いたID

 震災翌年の2012年にスタートした「固定価格買取制度」(FIT)。経産省が企業や個人を発電事業者と認定し、発電した電力を電力会社が高値で買い取る制度だ。国がお墨付きを与えた商売には数多の業者が参入し、「太陽光バブル」を招いた。17年の法改正を経てもなお、制度の盲点を悪用してボロ儲けした輩がいる。

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 目下、FITに基づく売電の権利(ID)を最多保有するのは、東京の西新宿に本社を置く「スマートグリッドホーム」(三宅邦夫社長)なる会社。

 FITのスタート当初、売電価格は1キロワット当たり40円に設定されたものの、太陽光バブルによる環境破壊が社会問題化し、高値買取の方針は撤回された。年ごとに36円、32円、29円と値下げが続けられ、現在は12円。一方、ID取得時の売電価格はそのまま維持されるため、スマート社は高値の付いたIDを転売して稼いできたのである。

「17年、スマート社が持つ北海道北広島市のIDを3億2400万円で購入しました。2メガワットのシステムを設置できる物件です」と語るのは、福岡の建設会社社長。

 スマート社のIDは初期に取得されたものばかりで、17年当時の北広島市の売電価格は1キロワット当たり32円。建設会社社長はこう目論んだ。

「17年の売電価格はわずか21円でした。スマート社のIDの32円ならば買取終了までの20年間で、ざっと7億円の売電収入が見込めた。新規参入するよりIDを購入した方がはるかに儲けを出せる」

60億円以上の売り上げ

 FITのスタート段階では、経産省からIDの認定を受ける際、太陽光パネルの設置先の地権者の同意書などは不要だった。スマート社は地権者に無断で、あちこちでIDを取得していたのだ。当然ながら、同社からIDを買った業者と地権者との間ではトラブルが続出した。

 三宅社長が開いたセミナーの参加者などにも多くの被害者がいる。19年に発足したスマート社による被害の「被害者の会」によると、

「スマート社は創業以来、60億円以上の売り上げがあったと見られています。ところが、三宅さんは決算というものをしたことがない。税務申告もまったく行っていません」

 実は、三宅社長は20年前、詐欺容疑に問われて警視庁に逮捕された経歴を持つ。昨年末から、東京国税局がスマート社の取引企業などに次々と調査に入っているという。

週刊新潮」2021年3月18日号「MONEY」欄の有料版では、制度の不備に付け込んだ詐欺紛いの手口について詳報する。

週刊新潮 2021年3月18日号掲載

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