「加山雄三」が明かす闘病生活 脳出血から復活…「会話は難儀するのに歌声は昔のママ」

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 傘寿を超えてなお、若手ミュージシャンを率いてロックフェスを沸かせる――。そんな「永遠の若大将」を突如として襲った病魔。だが、音楽活動を再開した加山雄三(84)に迷いは微塵も感じられない。闘病生活からAIまで、昭和のスターが語り尽くす令和の挑戦。

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 お陰様で入院前の70%くらいまで回復したと感じていたけど、ここ最近はさらに体調が良くてね。滑舌や発声も、俺の病気のことを知らなければ、リハビリ中とは気づかれないと思います。いまは9割方、元通りの生活ができてるよ!

〈本誌(「週刊新潮」)の取材に、明朗快活な受け答えを見せた加山雄三。今月11日に84歳の誕生日を迎えた“永遠の若大将”は、ここ数年、たび重なる病との闘いを強いられてきた。一昨年11月には軽度の脳梗塞で入院。まもなく復帰を果たしたものの、昨年8月29日に、今度は小脳出血を発症して活動自粛を余儀なくされた。現在はリハビリを続けながら、歌手活動を再開させている。〉

 最初の脳梗塞で右側の脳がやられて、次の脳内出血は左側でした。診断の結果は小脳出血で、そのときは水を飲もうとしたら気管に入ってしまってね。誤嚥というか、“ゴホン、ゴホン!”とむせ返るほど激しい咳が止まらなくなって、そのうちにぶっ倒れたわけです。咳き込んだときに一気に血圧が上がって、脳の血管が破れたのだと思う。激しい頭痛はなかったけれど、気づけば自宅の床に突っ伏して吐いていた。

 幸いだったのはすぐにカミさんが救急車を呼んでくれたことだね。担架で運ばれたのはかすかに記憶しているし、“何か大変なことが起きてるな”という感覚だけはありました。

 担ぎ込まれた病院でMRIを撮ると、脳内出血の範囲はかなり広かったみたいです。でも、その後に再検査を受けたら、出血している箇所が当初よりも小さくなっていた。ふつうはそんなこと有り得ないんだけど、結果的にそのお陰で無事に生還することができたんです。いや、脳ミソというのは不思議なものだなぁ、と改めて感じましたよ。

 ただ、意識が朦朧としながらも、不思議と死の恐怖は感じなかったな。というのも、19歳のときに一度、死にかけたことがあるんですよ。注射のショックで心肺停止状態に陥ってね。徐々に意識が遠のいて暗闇に落ちていくような感覚に襲われた。仮死状態だったのは数分間ながら、心の底から恐ろしいと感じました。おふくろに頬を引っ叩かれているのに気づいて息を吹き返したときは、「生き返った!」って周囲も大騒ぎだったよ。

 その経験と比較ができたから、今回、小脳出血で倒れても「まだ言葉は喋れる。死ぬことはないだろう」と、どこか冷静に考えることができた。

 それと同時に、親父(俳優の上原謙)が亡くなった82歳という年齢を超えていたので、「死んだら死んだでしょうがねぇや」という開き直りもあったかもしれないね。

歌声は全く問題ない

 それよりも大変なのはリハビリですよ。開頭手術こそ免れたものの、40日間は病院のベッドに寝かされたまま治療に専念していた。当然ながら、脳をやられたので、どうしても言葉がうまく出てこない。医者からはリハビリ用のテキストを渡されて、「らりるれろ」や「だぢづでど」といった文字を声に出して読むよう指示されるんです。「それじゃ、次はさかさまに読んでください」とかね。

 変な話だけど、そんなリハビリを続けながら思い出したのは、自分がまだ俳優として新人だった養成期間のこと。23歳で東宝に入社して、最初の2カ月間は延々と発声練習をやらされましたが、リハビリで渡されたテキストはそれとソックリなんだよ。当時からこの発声練習が大嫌いで、二度とやるものかと思っていたのに、まさか60年越しで同じ練習をさせられる羽目になるとはなぁ(笑)。

 ただ、リハビリを続けるなかで、自分でも一番驚いたのは“歌”でした。

 普段の会話には難儀していたのに、なぜか歌声だけは全く問題がなかった。発声も歌唱も入院前と何ら変わらない。それどころか、半世紀前の自分の歌声と比べても遜色がないんだよ。

 実は、病院でリハビリとトレーニングに励んでいた頃、倉庫にしまってあった資料をスタッフが整理するなかで、50年以上前に録音したオープンリールのテープが見つかったんです。

 正直なところ、全く記憶になかったけど、確かにプライベートで作った未発表曲だった。そのときは、若い頃の自分に「この曲を歌え」と言われたように感じてさ。どこか運命的で面白いから新曲として発表しよう、と。それが、84歳の誕生日にリリースした「紅いバラの花」なんです。

 Aメロはテープに残されたボーカルをそのまま活かして、Bメロはスタジオで新たに録り直した。つまり、30代の自分と時を超えてコラボレーションしたわけですが、これが思いのほかうまくいった。どっちも自分の声だからコーラス部分も綺麗にシンクロしている。レコーディングに携わったスタッフも、「50年前と、いまの加山さんの歌声がまるで判別できません!」と目を丸くするほど。これは面白い経験でしたね。

 やっぱり、音楽に時代や世代は関係ないんだよな。いまや世界的に活躍しているBABYMETALも、かなり以前に事務所の若いスタッフから聴かされた瞬間、「これは凄い!」と思った。同じように古い音楽にも素晴らしいものはある。心を動かす何かがあればいつの時代でも通用する。そこが音楽の魅力だね。

 一方で、入院中に一番恐れていたのは寝たきりになってしまうことでした。

 つい最近、「若大将」シリーズで共演した田中邦衛さんが亡くなったでしょう。これにはショックを受けましたよ。凄い衝撃でした。彼が寝たきり状態になって病院に入っていたとは耳にしていた。でも、それ以降は何の音沙汰もなかったからね。早く元気になってほしいと陰ながら祈るしかなかった。老衰で亡くなったと報じられましたが、88歳という年齢は旅立つにはまだ早いよなぁ……。

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