韓国で「不倫ドラマ」が過激化、人気の理由を考えたら浮かんだ“文政権を皮肉る造語”

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唐田への感情は“憎悪”

 2015年まで不倫に「姦通罪」が適用されていた韓国。儒教社会であるがゆえ、「姦通罪」がなくなった今も、不倫に対する嫌悪感は根強いという。日本の芸能界で起きた不倫報道にさえも、ネット上で厳しい言葉が飛び交うほどだ。

 昨年1月に発覚した東出昌大と唐田えりかの不倫も、韓国では日本以上に話題になった。東出への批判は当然として、SNSに並ぶ罵詈雑言を見る限り、不倫相手の唐田への感情は、“憎悪”そのものだった。

 しかし、実は韓国では、“不倫”を描いたドラマが数多く制作され、いずれも高視聴率を叩き出している。特に、昨年放送された『夫婦の世界』は視聴者を熱狂させ、ケーブルテレビでの放送ながら、最終話の視聴率は28.4%を記録した。

『夫婦の世界』に夢中になっていた韓国の既婚女性は、「ドラマが放送される週末が楽しみで、この時間だけは夫からも邪魔されたくない」と、興奮気味に話す。一方で、ドラマの中で不倫夫が口にした「恋に落ちるのは罪じゃないだろう!」というセリフに大激怒した視聴者も少なくない。

 不倫する男に激怒しながらも、ドラマには釘付けになる――。なぜ貞操を重んじる韓国で、こんなにも「不倫ドラマ」が視聴者の関心を呼ぶのだろうか。

“汚染ドラマ”と呼ばれ……

 韓国での不倫ドラマは今に始まったものではない。例えば、1996年に放送されたドラマ『恋人』(原題:『愛人』)は既婚の男女の恋物語だった。とはいえ、“W不倫”を扱ったこのドラマでは、キスシーンはあってもベッドシーンはなし。つつましい恋愛は視聴者をときめかせ、ドラマ終了後には“恋人シンドローム”を巻き起こした。

 また韓国では当時、結婚しても独身(Miss)のような若さと美貌を保つ女性を、“ミッシー族”と憧れを込めて呼んでいたが、ドラマに登場した“恋する人妻”はまさにミッシー族の象徴だった。しかし、その反面、「不倫を美化している」との苦情が殺到し、“汚染ドラマ”と批判された。

 日韓ワールドカップが開催された2002年には、不倫を描いた『危機の男』『止まらぬ愛』『告白』の3ドラマが同じ時間帯に放送された。このときも「また不倫か」と批判は大きかったものの、『止まらぬ愛』は視聴者を夢中にさせることに成功し、熱狂的なファンを生み出した。

 こうして批判を浴びながらも不倫ドラマは年々過激さを増し、2007年に放送された『私の男の女』では、“奪うか奪われるか”といった女同士の熱い戦いが描かれた。視聴率は6話で20%を超えると、右肩上がりで最終話は40%に迫る勢いだった。

 ちなみに、『私の男の女』で主演した女優キム・ヒエは、主婦が恋をする『妻の資格』や、夫もいる年上の女性と大学生の恋愛を描いた江國香織の小説『東京タワー』が原作の『密会』に出演、昨年の大ヒット作『夫婦の世界』では不倫される妻を熱演した。出演作がどれも話題になっており、まさしく“不倫ドラマの女王”といっても過言ではない。

 そして2008年には、不倫された妻の復讐劇を描いた「妻の誘惑」が視聴率40.6%を記録するほどの人気になった。ドラマを見ていた韓国人女性は、「“ヤラれたらヤリ返す”といった復讐シーンが、ストレス解消になりました」と言う。不道徳と批判されながらも、不倫ドラマにはこうした需要もあるようだ。

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