「禁煙学会」理事長、診断書偽造で刑事告発 診療報酬を不正請求の疑いも

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 目的のためには手段を選ばない。「原理主義者」に特有な言動である。「反たばこ」の総本山、「禁煙学会」理事長が刑事告発された。診察もせず、たばこ被害の診断書を作成していたのだ。

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〈被告発人の行為は、詐欺罪及び虚偽公文書行使罪に該当すると思料するので、捜査の上、厳重に処罰されたく、告発いたします〉

 そんな穏やかならぬ「告発状」が提出されたのは、3月31日のことである。

「彼みたいな人を許していては、私たちのような被害者がまた出てくる。だから告発に踏み切りました」

 と述べるのは、横浜市在住・英語講師の女性だ。

 経緯を振り返ると、市内の団地に住む女性の夫が突如、一階上に住む3人家族に訴えられたのは2017年のこと。曰く、女性の夫が吸うたばこの副流煙で家族が受動喫煙症や化学物質過敏症に罹患した。4500万円の損害賠償金と、自宅での喫煙禁止を求める――。

 が、女性の夫はヘビースモーカーではないし、ミュージシャンという職業柄、仕事部屋には防音設備があり、健康被害が出るほど煙が出るはずもない。一審、二審とも夫側が勝訴した。

 その裁判の過程で出てきたのが、「日本禁煙学会」理事長の作田学医師による「診断書」である。

 女性が続ける。

「彼は原告に相談され、うち1人については、対面もせず、伝聞と書類だけで『受動喫煙症』との結論ありきの診断書を書いていた。これは明確な医師法違反で、地裁の判決でも認定されたのです」

 昨年、裁判は終結。それを機に、診断書の偽造やそれに基づく診療報酬の不正請求について告発に踏み切った、というわけなのだ。

 作田氏率いる禁煙学会は、過激な言動で知られ、過去には、宮崎駿監督の映画「風立ちぬ」で、登場人物がたばこを吸うシーンがあるのが問題だと、制作会社に苦言を呈したことも。つい最近も、

「仙台市内の公園に喫煙者が集まるため、市が分煙を図って喫煙所の設置を検討した。すると早速“喫煙者の禁煙したいという気持ちをくじけさせる”と、反対の文書を送っています」(社会部デスク)

 分煙すら許さない。実に「不寛容」な話である。

 当の理事長に聞くと、「検察庁は適正に対処し、不起訴にするものと考えている」と述べるが、「禁煙ファシズムと戦う会」代表を務めていた、作家・比較文学者の小谷野敦氏は言う。

「私も作田さんと論争したことがありますが、こちらの主張に全く耳を貸さない人でした。しかし法令まで破るとは、ついに一線を越えてしまった気がします」

 新聞・テレビが報じない“たばこ警察”一つの実態だ。

週刊新潮 2021年4月22日号掲載

ワイド特集「人生のハザード」より

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