日本を巻き込む韓国の文化財管理のズサンさ 費用をケチってクレーン車が文化財を直撃する事故や連続放火が

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日本を巻き込むズサンな管理

 杜撰な管理は建物だけではない。

 韓国国立文化財研究所が2014~15年に書籍や絵画など53件の文化財を調査したところ、34%に相当する18件は保存処理が不要だが、30件は保存処理が必要、5件は保存処理を検討する文化財に分類された。

 朝鮮時代前期に編纂された宝物第1712号の「東仁詩画」は摩耗が深刻で、宝物第262号の「近思録」はカビが酷かった。

「勧州宗家門跡」(宝物第1002号)は過去に行った保存処理の不備から、さらなる損傷が懸念された。

 また、24.5%に相当する13件は、文化財の名称や年代、書物の数量、大きさなどの情報が正確ではないことが判明した。

 これだけならまだ対岸の火事とでも言っていられるかもしれないが、日本も韓国流の杜撰な管理によるトラブルに巻き込まれていると聞くと穏やかではないだろう。

 古都・慶州の世界遺産に登録されている仏教遺跡「石窟庵」は本尊が1体しかなく、もう1体は日本人に盗まれたとして日本に返還を求めたが、考古学調査で、仏像は初めから1体だったことがわかった。

 石窟庵は8世紀の建立で、朝鮮王朝の仏教弾圧で放置されていた。1909年に発見され、1910年代、日本統治政府が修復したが、戦後、韓国政府は再び放置。

 1960年代に当時の文化財管理局が復元した際、日本の復元が韓国仏教の資料と異なるとして配置を変えたが、2007年、成均館が所蔵していた資料から日本統治政府が正しく、文化財管理局が誤っていたことが判明したのだった。

 他方、史蹟の管理を日本に依存するものある。

 1970年代半ばから、百済・武王が建設した王宮跡の発掘作業がはじまった。

 京都・青蓮院が所蔵する書物に記載されていた「百済の武王が都を遷した」という記述をもとに調査を行い、大規模な王宮跡を発見。武王の王宮に関する史料は青蓮院にしか残っていない。

 2010年、忠清南道扶余郡やロッテなどが共同で歴史テーマパーク「百済文化団地」を開設したが、韓国内には史料がなく、多くは日本、一部は中国の史料を参照した。

 可能な限り復元するため、同時代に建てられた日本の建築物を参考にしたという。

日韓請求権協定で解決済み

 かねて韓国は倭寇と秀吉軍、そして日本の統治政府が韓国の遺物を略奪したと主張してきた。

 なかでも日本にある高麗仏画は、倭寇に略奪されたと訴えるのだが、実際には貿易品として輸出した可能性が高い。

 日本と韓国は、1965年に締結した日韓請求権協定で、1945年8月15日以前に取得した財産の権利を放棄する取り決めを交わしており、それ以前に移転した財物は、韓国はもちろん、日本も返還を要求できないことが原則になっている。

 2012年には、長崎県対馬市から仏像2体と教典が8人の韓国人窃盗団に盗まれる事件が発生し、話題になった。

 2体のうちのひとつ、国指定の重要文化財である海神神社の銅造如来立像は事件から3年が経過した2015年7月に返還された。
 
 李明博元大統領の竹島上陸と朴槿恵前大統領の告げ口外交で、日韓関係が悪化して日韓通貨スワップ協定が終了した年である。

 事態を憂慮した米国のオバマ・バイデンの正副大統領は日韓関係の修復を求め、韓国側も関係改善を模索。

 安倍晋三前首相が発表予定の戦後70年談話を前に、日本が要求する仏像を返還して対日外交を優位にしたいのではないかという憶測が飛び交った。

 日本の貴重な文化財が、韓国の拙劣な外交の人質に取られていたと言えるかもしれない。

 盗まれた2体のうちのもう1体である長崎県指定有形文化財の「観世音菩薩坐像」はまだ戻ってきていない。ややこしいのだが、韓国国内で裁判沙汰になっているからだ。

 本来なら条約に基づいて即時返還されるのが筋だが、韓国・曹渓宗の浮石寺は倭寇に略奪されたとして所有権を主張し、世論も「そもそも日本が盗んだ」という論調に流されてきた。

 像内の納入品から、1330年頃に寺に奉安するため制作されたと読み取れる内容が見つかったことで17年1月、韓国の地裁は浮石寺の所有権を認め、仏像を保管する韓国政府に寺への返還を命じた。

 しかし韓国政府は、記録が高麗時代末期に作成されたことを立証できないとして控訴。政府は所有権を取得し、日韓交渉の切り札にしたいのだろうが、盗難品を切り札にしてよいはずがない。

 朝鮮時代、多くの仏像や仏画が貿易取引で日本などに渡ったと見られている。動機はともかく、朝鮮王朝の仏教排斥による焼失を逃れて、後世に残る結果となった。

 現代の韓国は、文化財をきちんと管理できているといえるのだろうか。返還を求めるより管理を日本に委ねた方がよほど安心ではないか。

佐々木和義
広告プランナー兼コピーライター。駐在員として渡韓後、日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える広告制作会社を創業し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

デイリー新潮取材班編集

2021年4月16日掲載

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