韓国戦とモンゴル戦で最大の収穫は「伊東純也」 殻を破って得た“監督の信頼”

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攻撃の起点となった伊東

 記録的な大差で敗れたものの、彼らの姿勢は長く記憶にとどめておきたいし、そうした姿勢が今後の成長につながることを期待せずにはいられない。

 試合に話を戻すと、日本代表とU-24日本代表の活動が重なったことで、大会関係者は大変だったかもしれない。

 しかし取材する方にとっては、選手のポテンシャルやポジションの適性を比較できるので大いに参考になった。

 1例を挙げるなら、4-2-3-1システムの「3」の右のポジションである。日本代表では2試合ともスタメンを伊東が務め、モンゴル戦では2ゴール3アシスト(鎌田と守田、稲垣の2点目)の大活躍を見せた。伊東はこの4ゴールだけでなく、他の4ゴールでも右サイドで攻撃の起点になることでゴールラッシュを演出した。

「相手が弱いから」と言ってしまえばそれまでだが、韓国戦でも臆することなく堂々としたプレーからスピードで相手を圧倒した。

 この2試合で“殻を1つ破った”印象すら受けた。最大の収穫と言ってもいいし、森保一監督(52)がモンゴル戦で最後まで使い続けたのは信頼の証であり、定位置を確保したのは間違いない。

強化に手応え

 その右MFのポジションだが、9月から始まるW杯アジア最終予選は最激戦区になりそうだ。日本代表では浅野拓磨(26)や、今回はケガ明けで招集が見送られた永井謙佑(32)がいる。

 アンダー世代に目を移せば、今回は辞退した堂安律(22)を始め、三好康児(24)、食野亮太郎(22)に加え、久保建英(19)も入ってくる(日本代表で鎌田からすぐにポジションを奪うのは難しいと判断)。

 左サイドの古橋、三笘薫(23)、相馬勇紀(24)に今回招集されていない中島翔哉(26)と比べると、ライバルは多く手強いと言わざるを得ない(原口元気[29]は今シーズン、トップ下でプレーしているため外した。彼は左右両サイドとボランチでもプレーできるから)。

 果たして9月の最終予選はどんなメンバーで臨むのか。ただしその前に五輪代表の熾烈な争いがある。オーバーエイジ枠を含めた18名という“狭き門”を誰が突破するのか。そして五輪後はカタールを目指しての新たな戦いがスタートする。

 今回の4試合を開催するには様々な批判もあった。しかし代表チームの強化という点では有意義だった。そしてこの活動が、安心かつ安全な東京五輪の開催の一助になれば、サッカーの末席に携わる者として望外の喜びである。

六川亨(ろくかわ・とおる)
1957年、東京都生まれ。法政大学卒。「サッカーダイジェスト」の記者・編集長としてW杯、EURO、南米選手権などを取材。その後「CALCIO2002」、「プレミアシップマガジン」、「サッカーズ」の編集長を歴任。現在はフリーランスとして、Jリーグや日本代表をはじめ、W杯やユーロ、コパ・アメリカなど精力的に取材活動を行っている。

デイリー新潮取材班編集

2021年4月2日掲載

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