「甲子園の魔物」に襲われた…センバツ「伝説の決勝戦」で起きた“まさかの結末”

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あきらめずに追っていれば……

 甲子園名物・浜風のいたずらが皮肉な結果をもたらしたのが、91年の広陵vs松商学園である。

 5対5で迎えた9回裏、広陵は安打と四球で1死一、二塁、下松孝史が右翼に大飛球を放った。

 松商学園のライトは、7回途中に降板し、外野守備に不慣れなエース・上田佳範(元日本ハムなど)。しかも、これが守備に就いて初めて飛んできた打球だった。前進守備を敷いていた上田は必死に背走したが、追いつけそうにないと見るや、捕球をあきらめて、いったん足を止めた。

 ところが、直後、打球は浜風にあおられ、右から左へと押し戻されてくるではないか。そして、慌てて差し出すグラブのわずか左に落ち、サヨナラ打となった。「あきらめずに追っていれば……」。上田が悔いを残したのは言うまでもない。

 サヨナラの打球がライトに飛んだのは、広陵にとって幸運だったが、その一方で、松商学園にも一陣の風が幸運をもたらすはずだった。一瞬の判断が分けた明暗…。「幸運の女神には前髪しかない」というレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉を象徴するような幕切れだった。

 最後の最後まで何が起きるかわからない決勝戦。今年もどんなドラマが見られるか、球児たちの熱い闘いに注目したい。

久保田龍雄(くぼた・たつお)
1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍「プロ野球B級ニュース事件簿2020」上・下巻(野球文明叢書)

デイリー新潮取材班編集

2021年4月1日掲載

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