韓国「検事総長」が文在寅政権に反旗の辞任 一躍大統領候補に、日本への影響は?

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尹人気への対抗策は…

 とはいえ、大統領選はまだ1年先のこと。それなのにこれほど尹氏が注目されるのには訳がある。大統領選の趨勢を占う「二大都市決戦」、ソウルと釜山の両市長選が4月7日に控えているのだ。

 龍谷大学教授の李相哲氏が説明する。

「釜山市長選では、与党が新空港建設を含めた28兆ウォン(約2兆8千億円)の大型公共事業計画を発表しましたが、あまりに大風呂敷すぎてバカげているとの市民の反発があり、野党候補の支持率が15ポイントほどリード。このまま野党候補が勝つのではないかと思います」

 またソウル市長選は、

「野党候補の一本化に時間が掛かり、接戦が続いている」(黒田氏)

 とのことだが、

「そんななか、尹氏が野党候補の応援をするのではないかという憶測が飛び交っています」(同)

 つまり、すでに尹氏の一挙一動が耳目を集めているのである。そして、

「ダブル市長選で両方とも野党が勝てば、その勢いに乗って尹氏が大統領選出馬を正式表明することもあり得ます」(同)

 いやが上にも二大都市決戦と尹氏の動向が気になるところなのだ。

 この尹氏の今後を左右しかねない二大都市決戦、すなわち文氏の“永久政権構想”の野望を砕きかねないダブル市長選において、何が争点になっているかというと――。

「釜山市長選で与党が新空港建設をぶち上げたのに対し、野党は『日韓海底トンネル構想』をぶつけてきました……」

 こう呆れ気味に話すのは、先の韓国ウォッチャーだ。

「その構想の一案では、釜山と佐賀県唐津の間、全長約200キロを海底トンネルで結ぶことになっていて、総事業費は20兆円以上とも言われています。これに対し、与党は『海底トンネルは日本への利敵行為』などと批判し、なかには『唐津は秀吉の文禄・慶長の役における日本軍の出撃地点だからけしからん』というイチャモンのような声まで上がっています。要は、釜山市長選においても『日本』が勝手に利用され、反日であるべきか否かが争点のひとつになっているんです」

『悪韓論』(新潮新書)の著者で評論家の室谷克実氏は、

「日韓海底トンネルに実現性があるとは思えず、そもそも日本の同意があるわけでもない。言ってみれば、マンションの隣の住人が、許可もなく勝手に部屋の壁に穴を開けようとしているみたいなものです」

 と一笑に付すが、いずれにせよ、大事な決戦の舞台で対日姿勢がひとつのキーワードになること自体、韓国にとって我が国がいかに「大きな存在」であるかを物語っていると言えよう。

「片思い」としか思えない日韓海底トンネル構想はさておき、仮に二大都市決戦でいずれも野党が勝つと仮定した場合、前記の通り尹氏の大統領選正式出馬宣言が現実味を帯びてくる。他方、こんな見方もある。

「文左翼政権は絶対に政権を手離すまいと必死になり、あらゆる手を使ってくるはずです。例えば、公務員を辞めてから2年間は大統領選に出馬できないという法律を作り上げる。そうなると尹氏は身動きが取れなくなります」(同)

 確かに、公捜処を発足させた文氏であれば、そのくらいの法律を制定するのは朝飯前のことに違いない。

 それでも、日本からすれば尹大統領、より正確に言えば「反文派の大統領」の誕生にどうしても期待してみたくなるところである。なぜなら――。

文氏逮捕の結末も

 慰安婦合意の破棄、海上自衛隊の哨戒機に対するレーダー照射、いわゆる徴用工問題の蒸し返し……。振り返るまでもなく、17年に誕生した文政権は徹頭徹尾「反日政権」を貫いてきた。無論、尹氏に関しては、

「外交や経済について語ったことは一度もない。それで本当に大統領が務まるのか」(室谷氏)

 という至極真っ当な懸念があるものの、それでも日本にとっては「反日の文大統領よりはまだマシ」であるはずだ。事実、

「リーダーが全能である必要はなく、いかにいい人材を集めて上手く使うかが大事です。その点、文大統領は、チョ・グクに代表されるようにお友だちばかりで周りを固め、人材を活用できていない。政治家としての垢(あか)がついていない尹氏のほうが、よほどスムーズに政権運営できるのではないでしょうか」(黒田氏)

 との指摘もある。やはりここは一度、「反文派の大統領」を是非とも見てみたいものである。なにしろその暁には、

「尹氏は文大統領による“検察改革”に反対して検事総長を辞任したのですから、仮に彼が大統領になれば、真っ先に元に戻す、つまり検察の権限を復活させることに尽力することでしょう。そうなれば、文大統領に持ち上がっている娘婿への不正支出疑惑などにもメスが入り、大統領を退任した文氏が逮捕される結末も充分に考えられます」(呉氏)

 また、李氏はこんな見通しを示す。

「来年の大統領選で政権交代が起き、保守政権が誕生すれば、今の文大統領と違って常識に基づいた話し合いができるようになり、日韓関係は間違いなく改善するでしょう。そして現在のところ、政権交代を目指す保守陣営の有力候補が尹氏なのです」

 元駐韓大使の武藤正敏氏が締めくくる。

「与党系の有力次期大統領候補はふたりいますが、どちらがなったとしても左派政権であることには変わりがなく、徴用工や慰安婦の問題は解決しない。政権交代しない限り、日韓関係は改善しません」

 努々(ゆめゆめ)、反日大統領の負の遺産が次期“傀儡”政権に引き継がれないことを願うばかりである。文大統領が作った「韓国の歴史」、否、「暗黒の歴史」が受け継がれないことを――。

週刊新潮 2021年3月25日号掲載

特集「手負いの『検事総長』が反旗の辞任で『文在寅』“永久政権”を打倒する日」より

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