韓国「検事総長」が文在寅政権に反旗の辞任 一躍大統領候補に、日本への影響は?

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 目下、韓国が揺れている。文在寅(ムンジェイン)大統領(68)によって「粛清」の対象となった検事総長が公然と反旗を翻して辞任、一躍、次期大統領候補に躍り出たのだ。ついに反日政権「倒幕」の胎動が!

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 鬱々(うつうつ)としたコロナ禍にあって、久しぶりの「吉報」か――。

 古今東西、太陽が沈まないことはないし、権力が腐らなかった例(ためし)もない。

 哀しいかな、どこぞの国の総理も、長男の接待疑惑が取り沙汰されたり、記者に逆ギレしたり、と早くも盛者必衰の理(ことわり)を体現しつつある。

 一方、歓迎すべきことがないわけではない。お隣の国の反日大統領にも、「終わりの始まり」が見え出したのだ。韓国で「反・文在寅」の号砲が鳴り響き始めたのである。

「憲法の精神や法治システムが崩壊しつつある。この社会が苦労して積み上げてきた正義と常識が崩れるのを、これ以上見ていられない。検察での私の仕事はこれまでだ」

 3月4日、韓国の尹錫悦(ユンソクヨル)検事総長(60)はこんな言葉を残し、「抗議の辞任」を決行した。尹検事総長、すなわち反・文大統領の旗頭。そんな彼が辞任の挨拶でさらにこう続けたため、同国の反・文派は俄然色めき立ったのだった。

「これからも自由民主主義を守り、国民を守るために全力を尽くす」

 スワ、事実上の大統領選出馬宣言か。

 この尹氏の「決起」は、韓国の野党「国民の力」をはじめとする保守派、そして日本にとっても福音となる可能性を秘めている。

「そもそも尹氏は2019年7月、文大統領により検事総長に任命された人物です」

 と、「文vs.尹」に至る経緯を振り返るのは、韓国出身の評論家で拓殖大学教授の呉善花氏だ。

「文政権になる前、尹氏は朴槿恵(パククネ)前大統領の不正を徹底的に捜査し、その功績が認められて検事総長に大抜擢されました。文大統領は尹氏を検事総長に任命するにあたり、『大統領府でも与党でも生きた権力に厳しく臨んでほしい』と伝えています。そう言うことで、自分たちの政権の潔白さをアピールする狙いがあったのでしょう」

 文氏にしてみれば、「敵」である朴氏を追及した尹氏は敵の敵、すなわち味方であるとの「油断」があったのかもしれない。まさか、味方である自分たちに牙を剥(む)くことはないだろうと。しかし、世の中はそう甘くなかった。

「検事総長に就任した尹氏は、文大統領の言葉を実践するかのように、忖度なしに次々と文政権のスキャンダルを精力的に捜査し始めます。その象徴は、文大統領の側近であった『たまねぎ男』ことチョ・グク前法相に関する、娘の大学不正入学疑惑などの一連のスキャンダルです」(同)

 飼い犬に手を噛まれた格好となり慌てた文氏は、19年の年の瀬に禁断の手に打って出る。「独裁法」とでも言うべき恐ろしい法律を作ったのだ。

 具体的には、大統領や国会議員といった高位公職者とその家族を捜査・起訴する「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」なる独立機関の設置を決めたのである。

 この公捜処は検察より上位に位置付けられ、そして公捜処の長官は大統領が任命する。要は、自らに歯向かうことを止めようとしない尹検事総長率いる検察組織を骨抜きにするべく、新たな組織を拵(こしら)えたわけだ。

「端的に言えば、公捜処は大統領が意のままに操れる捜査機関であり、検察に自分たちの不正を暴かせないようにするための、とんでもない暴挙です」(同)

待望のニューヒーロー

 しかも、公捜処にはさらなる「陰謀」が隠されているという。

 ある韓国ウォッチャーが解説する。

「韓国の大統領は1期5年で再選なしのため、来年3月の大統領選に文氏は出られません。だからといって、『後はご自由に』というわけにはいかない。なぜなら韓国では、その座を退いた大統領が次の政権によって必ず捜査対象にされるという歴史が繰り返されてきた。この歴史から逃れるために、文氏は公捜処を作り、自らが退任しても決して逮捕されないようなシステムの構築を目論んだわけです」

 さらには、

「捜査当局が時の政権にメスを入れられないとなれば、政権交代が起こりづらくなり、文政権与党の『共に民主党』は実質的な永久政権を視野に入れることが可能になった」(在韓ジャーナリスト)

 これにはさすがに、韓国国内でも「悪法」などと批判の声が上がったが、文氏は意に介さず「独裁法」の施行を断行した。そして今年1月、実際に公捜処は設置され、その上、2月には共に民主党が検察の捜査権をさらに奪う法案を発議する。ことここに至り、尹氏は検察を去ることを選択し、「新たな戦い」へと突入していったのだった。

 すると、即座に「尹人気」が沸騰する。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏曰く、

「前回の大統領選で文氏に勝利をもたらした中道層は、文政権の偽善に倦(う)んでいた。そんな文政権と対峙してきた尹氏は中道層、そして国民にとって待望のニューヒーローと映っている」

 というわけで、まだ正式に大統領選出馬表明をしていないにも拘(かかわ)らず、今月8日に公表された「次期大統領にふさわしい人物」を問う世論調査で、それまで首位を独走していた与党系候補の24・1%を抜き去り、32・4%の支持を集めた尹氏が一気にトップに躍り出たのである。韓国メディアも大騒ぎで、

〈尹錫悦、来年の大統領選で台風の目になる見通し〉

〈支持率1位の尹錫悦……政界、超緊張〉

〈共に民主党の危機感を高めた「尹錫悦現象」〉

 といった見出しが新聞各紙に躍り、文字通りの「尹錫悦現象」に沸いている状況なのだ。

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