「年金暮らしなのに1300万円払えと言われ…」 市が区画整理に協力した住民に高額請求の恐怖

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「年金暮らしなのに、今ごろ1300万円を払えと言われても……」

 そう話すのは、埼玉県入間市に住む80代の御婦人である。彼女に大金を請求したのは、なんと入間市役所だ。聞けば、昨年10月、市の担当者から区画整理事業の「清算金」を求められたという。

「私の実家はこのあたり(入間市)にあって、180坪ほどの敷地に住んでいたのですが、1987年に一帯の区画整理事業が始まり、引っ越すことになりました。道を広げるため、地主は所有地の一部を提供し、前よりも狭い土地をもらいました」

 整理の結果、土地評価額が上がった地主は差額を清算金として払い、下がった地主は逆にお金を貰うのが区画整理の仕組みである。

 この地域の区画整理事業は約63ヘクタールに及び、地権者は約1900人。そのうち約600人が清算金を請求されたという。

「最初は市の担当者も“大した金額にはなりません”と言っていました。でも気になって何度か区画整理事務所に尋ねたのですが、“事業が終わらないと分からない”と言うばかり。そうこうするうちに10月になって届いた書類を見て、1桁間違っているんじゃないかとびっくりしたのです」(同)

 市役所との面談で「とても払えない」と訴えても「法律で決まっている」と言うばかり。おまけに今年11月までに支払わなければ差し押さえの可能性もあるとのことだった。

「くやしくて“土地を売って出て行けという意味ですか”と聞いたら、“その方法もありますね”と言われてしまいました」(同)

 一方、入間市役所は、

「とにかく話し合いをさせて頂くのが大事だと考えています」(区画整理課)

 NPO法人「区画整理・再開発対策全国連絡会議」の遠藤哲人事務局長は言う。

「昔はどこの役所の担当者も“清算金は50万円もしない”などと言って、区画整理に協力させていたようです。ところが89年に土地基本法が制定された際、ばらばらだった固定資産税の評価額が一気に引き上げられ、べらぼうな金額を要求されるケースが急増しました。同じようなことは入間だけでなく、埼玉県では草加市や和光市でも起きています」

 2019年の時点で進行中の区画整理事業は全国で809件。奇麗な街並みができたと思ったら、住民に高額の請求書が届く。そんなディストピアがやって来るのか。

週刊新潮 2021年3月18日号掲載

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