「韓国企業」が日本進出・再進出を目指す理由…ネイバー、現代自動車、三養食品の例から

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現代自動車の再進出

 現代自動車もまた、日本再進出を目論んでいる。

 現代自動車は2001年、日本市場に参入し、三菱自動車等の販売網を活用した。

 1967年創業の現代自動車は当初、米フォード車の部品を輸入して韓国で組み立てるノックダウン生産を行なったが、フォード社との間に軋轢が生じると三菱自動車と生産技術供与契約を締結し、1975年、韓国初の国産車「ポニー」を発売した。

 三菱車をベースとする車種を生産し、90年代からGDIエンジンの技術供与を受けるなど、三菱自動車との関係が深い。

 現代自動車が日本に進出した2001年、三菱自動車のリコール隠しの発覚で、消費者の三菱車離れがはじまった。

 日本の三菱車ディーラーは大きく2つに分けられる。

 三菱自動車が出資した事実上の直営店と販売代理店だ。

 直営店は、三菱自本社が売上減を支えたが、一方、販売代理店は苦境を乗り切るために現代車を販売。三菱車離れが加速した2002年以降、韓流ブームと相まって年間2000台を超える販売台数を記録した。

 その後2006年に三菱自動車が品質改善策を発表すると消費者が戻り始めた。ディーラーが現代車を販売した目的は上述の通り、売上が落ち込んだ三菱車の穴埋めだ。

 三菱車が売れるようになれば現代車を売る理由はない。08年には1000台を割り込み、2010年、日本の乗用車市場から撤退。以降、訪日外国人の増加で需要が増した大型バスのみ販売してきた。

 撤退からちょうど10年目となった2020年6月、現代ジャパンが日本語公式Twitterアカウントを開設し、東京の蔦屋で水素燃料電池車「ネクソ(NEXO)」のプロモーションを実施した。

「ネクソ」は現代自動車の世界戦略車で、トヨタ「MIRAI」を追走する。

 政府が電気自動車普及促進政策を展開し、水素ステーションや充電スポットなど、電気自動車のインフラが韓国を凌駕する日本にネクソを投入したいという意思が、ありありと感じられた。

日本の技術に学んだ即席麺メーカーの進出

 通信やネット、クルマと来て、最後は食について。

 2019年1月、韓国2位の即席麺メーカー、三養食品は日本法人を設立した。

 三養食品を創業した全仲潤氏は60年代初期、国民の飢えを解決するため、コメの代わりに手軽に食べられる食品として即席麺に目をつけた。

 韓国商工部から5万ドルを借り受けて日本を訪問。

「明星食品」の当時の奥井清澄社長が、技術を無償で供与し、製造機械を原価で提供した。

 三養食品は、ホームページに日本の明星食品から機械と技術を取り入れ、韓国で初めてラーメンを発売したと明記するなど、日本の技術を導入したことを公表している珍しい韓国企業である。

 ちなみに、いまはホームページに見当たらないが、三養と韓国語表記が同じレンズメーカーの三洋オプティクスも、最近まで日本の技術で開発したと明らかにしていた。

 三養食品は2012年に発売した激辛の「プルダックシリーズ」がユーチューブで拡散し、世界累計20億食を販売。

 世界に打って出る第一歩として、日本に同社初の海外拠点を設立したことになる。

 ほかにもBBQチキンをはじめとする飲食店やイニスフリーといった化粧品など、多くの韓国企業が、日本に進出し、あるいは日本進出を目論んでいる。

 韓国企業が日本を目指す理由は主に2つある。

 まずは市場規模である。

 韓国は人口5100万人。内需が小さく国内総生産GDPの60%を貿易に依存している。

 一方、人口1億2000万人の日本は貿易依存度が約27%で、内需の規模は韓国を遥かに凌駕する。

 また、多くの韓国企業が日本を基準に設定しており、模倣品も多い。どの国でも同じことだろうが、クオリティがそれなりであれば、その国のコピー商品をその国の市場に投入するのがいちばん手っ取り早い。

 日本製品というだけで不買リストに加える韓国。外見だけコピーしても、それだけではオリジナルに勝てないのではないか。

佐々木和義
広告プランナー兼コピーライター。駐在員として渡韓後、日本企業のアイデンティティや日本文化を正しく伝える広告制作会社を創業し、現在に至る。日系企業の韓国ビジネスをサポートする傍ら日本人の視点でソウル市に改善提案を行っている。韓国ソウル市在住。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月18日掲載

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