郷ひろみが語る「引退時期」と「新御三家」の思い出 「僕が歌手を辞めるべき時は…」

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西城秀樹、野口五郎への思い

 歌手デビューから半世紀の節目を迎えた郷ひろみ。野口五郎、西城秀樹とともに「新御三家」と称された郷さんが今あらためて二人に対して思うこととは――。

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 2016年には、本誌(「週刊新潮」)において「新御三家」と呼ばれた野口五郎、西城秀樹、そして郷さんの三人による鼎談が実現した。郷が兄弟の一人と慕った西城さんがこの世を去ったのは、それからわずか2年後のことだった。

「早過ぎる死だったという感覚は、彼を知る誰にもあるはずです。どういうわけか、先に逝った秀樹が僕の悪い部分を持って行ってくれたように思えたりして……。もしそうなら、申し訳ないなあというのと同時に、ありがたいことだという二つの気持ちがあるんです。こんなふうに思うのは、僕らがそれだけ近い存在だったからでしょう。

 知り合って以来、どっちが年上とか年下とかいう感覚を持ったことがない。あくまで五郎が長男で秀樹が次男、僕が三男坊。常に二人が僕の上にいたから頑張れた。いつも“二人よりも努力しよう”と思っていましたから」

 昭和50年の「日本レコード大賞」では、野口が「私鉄沿線」で、西城が「この愛のときめき」で「大賞候補ベストテン」に選出された。ところが郷は落選し、新御三家の中で一人苦渋を味わった。

「あの時ほど、自分の至らなさに恥じ入ったことはありません。“落とされて当然だ。いまの歌唱力じゃあ受賞できるはずがない”と。でも、同時に“絶対にもっと上手くなってやる”と自分に誓ったのも事実。すると、翌年のレコ大で「大衆賞」を受賞することができたんです。とはいえ、1年でそこまで上達するはずもなく、とても「これで二人に勝った」とは思えませんでした。奇しくも賞を頂いた曲は『あなたがいたから僕がいた』で、“五郎と秀樹がいるから僕がいる”と思うと、本当の勝ち負けは彼らと競うことではなく、自分自身との戦いにあると気づかされました」

「僕が歌手を辞めるべき時」とは

 昨年6月、郷は8冊目となる著書『黄金の60代』(幻冬舎)を上梓した。そこでは「成功は60代から」だと訴えている。

「人生は若さを失ってからの方が長い。それに気づいてから“中年以降の時期を充実させる以外に人生を満ち足りたものにする方法はない”と思い至りました。

 最近は『人生100年』とも言いますが、10代から20代の時期は儚いもので、あっという間に過ぎていく。それでも人生は続き、30代から40代、50代、60代、70代、80代、さらには90代やそれ以上まで続いていく。そう思えば人生のどこに重きを置くべきかは明らかです。だから僕は60代こそが人生最高の時期だと考えてきました。タイトルに『黄金』とつけたのはそれが理由ですし、60代に入っている自分を叱咤激励するという意味もありました。

 還暦を迎えて“これからどうしよう”という意識と“これからもっと良くなる”という意識で過ごすのとでは、同じ10年を生きたとしても、迎える70代はまったくの別物になると思うんです。仮に思い描いたような70代でなかったとしても、“よし、じゃあ、今度こそ!”と前向きに次の10年をスタートさせることができる。そんな繰り返しを重ねながら、僕の人生は終わりの時を迎えるんだろうと思っています。

 ただ、僕の職業には定年退職がない(笑)。いずれは自分で現役を退く時期を見極める必要が出てくるかもしれません。もしもトレーニングを“頑張れる”という意識が消え失せて肉体の衰えを自覚し、いつになるか分からないヒット曲との巡り合いを待てなくなった時には“もういいんじゃない?”“十分頑張ったよ”と、自分で自分の肩を叩くかもしれません。その時こそが、僕が歌手を辞めるべき時なのでしょう」

子どもに言い聞かせる「僕みたいな仕事はしない方がいい」

 2012年には3度目の結婚を果たし、2年後には双子の男児に恵まれた。

「彼らにただ一つ言い聞かせていることがあるんです。それは“僕みたいな仕事はしない方がいい”ということ。いずれ成長して“芸能活動をしたい”と言ってきても“絶対にやめた方がいい”と反対します。

 芸能界で生きていくには、人一倍の努力や諦めない気持ちが必要ですが、加えて大切なのはツキ、強運の有無。僕は運に恵まれてきたと思うところがたくさんあって、だからこそ頑張り続けてこられた。もちろん、運だけに頼ってはいけないんですが、努力だけではどうにもならないことがあるのもまた事実。妻も、子供たちの芸能界入りには反対していますし、僕としてはむしろ海外に目を向けて欲しい。広い世界の中で、日本人として素晴らしい人生を歩む。それが父としての願いですね。

 僕自身としては、3月からファンクラブ向けのイベントを控えているほか、新年度に入った5月からは2021年の全国ツアーがスタートします。今年は50年目という大切な節目でもあるので、それに相応しい華やかなものにしたいと考えているところです」

週刊新潮 2021年3月4日号掲載

特別インタビュー「『週刊新潮』65周年にエール 納豆を200回かき混ぜる『65歳郷ひろみ』鋼の『私生活』」より

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