巨人はやはりソフトバンクに完敗…個人タイトル数で見えたプロ野球の“超格差社会”

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投打ともに万遍なく

 さて、次にパ・リーグを見てみると、両リーグナンバーワンとなるソフトバンクの53回(打者23回・投手30回)という数字がいやでも目に飛び込んでくる。17年~20年まで日本シリーズ4連覇中の、今や“球界の盟主”といってもいいソフトバンクだけに巨人を上回るその数字は大いに納得できる。

 ソフトバンクの強さの秘密は、投打ともに万遍なくタイトルホルダーを輩出しているその数字からも読み取れる。というのも、例えば、最多勝利を見ると、7回の巨人は、菅野智之(3回)と内海哲也(2回)の2人で大多数の5回を占めるが、ソフトバンクの場合は16年間で9回となっているなか、複数回獲得したのは2回の和田毅のみ。残りの7回はいずれも異なる投手が名を連ねている。つまり、それだけ選手の層が厚く、世代交代がうまく機能している証拠ともいえるからだ。

 このソフトバンクに肉薄しているのが西武の46回だ。とりわけすごいのが打者の総数で36回という他チームを圧倒する大きな数字となっており、それに大きく貢献しているのが最多本塁打6回、最多打点4回の中村剛也、盗塁王4回の片岡治大、最多安打4回の秋山翔吾といった面々。こうしたスペシャリストがいれば強いのも当然だ。

 クライマックスシリーズでは惜しくもソフトバンクに敗れたものの、西武が18年、19年とリーグ連覇を果たしたのもうなずけるが、先に見たヤクルト同様、こちらも投手力が今イチ。投手部門は10回でリーグ5位に沈んでいる。

 ところで、パ・リーグでこの16年間にタイトルホルダーが1人も出なかったのは2チームだけ。楽天は、最多安打、最高出塁率、最優秀中継ぎの3部門なのに対して、ロッテは最多本塁打、最多打点、最高出塁率、最多奪三振、沢村賞の5部門にも及んでいる。このうち、最多本塁打は、86年に2年連続の三冠王に輝いた落合博満以来、34年間も出ていないが、それよりも驚く事実があった。

 というのは、ロッテは12球団で唯一、沢村賞投手を出していないのだ。もちろんロッテにも通算215勝を挙げた「マサカリ投法」村田兆治、3年連続20勝、通算175勝の成田文男など、沢村賞にふさわしいエースはいたものの、同賞は88年までセ・リーグの投手のみが対象だったし、94年に15勝を挙げた「剛腕」伊良部秀輝も完投数、奪三振数では上回ったが、山本昌(中日)の前に涙を呑んでいる。また、西武時代の09年に受賞した後、14年から19年まで在籍した涌井秀章は2度目に手が届かなかった。

 こうして個人タイトル数を通してみていくと、プロ野球の“超格差社会”を感じざるを得ない結果となってしまったが、ソフトバックの“一人勝ち”を許せば、プロ野球はどんどんつまらなくなる。今シーズンは、他の11球団が奮起して、ペナントレースや日本シリーズを盛り上げてもらいたい。

清水一利(しみず・かずとし)
1955年生まれ。フリーライター。PR会社勤務を経て、編集プロダクションを主宰。著書に「『東北のハワイ』は、なぜV字回復したのか スパリゾートハワイアンズの奇跡」(集英社新書)「SOS!500人を救え!~3.11石巻市立病院の5日間」(三一書房)など。

デイリー新潮取材班編集

2021年3月9日掲載

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