「カルロス・ゴーン逃亡」手助け親子を逮捕 特捜部が追い続ける「協力した人物とは?」

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アメリカに滞在したゴーンの家族

 特別背任の罪などで起訴され、保釈中だった日産自動車の元会長、カルロス・ゴーン被告(66)。その逃亡を手助けした疑いで、アメリカの元特殊部隊員とその息子が東京地検特捜部に逮捕された。日本の国家主権をないがしろにした逃亡劇に捜査当局はどこまで迫れるか?

 今回逮捕されたのは、アメリカの特殊部隊「グリーンベレー」の元隊員、マイケル・テイラー容疑者(60)と息子のピーター容疑者(28)。

 親子は、2019年12月、ゴーン被告のレバノンへの逃亡を手助けした犯人隠避と出入国管理法違反幇助(ほうじょ)の疑いで逮捕状が出ていた。

 2020年5月にアメリカで身柄を拘束されてから約10カ月が経過したことになる。

 ここに至るまでの経緯を社会部デスクに解説してもらうと、

「今回の捜査は法務検察のみならず、警察、外務省などさまざまな省庁や捜査機関にまたがったものとなっています。ゴーンを取り戻すためにどうすれば良いのかを考えていて、大枠では“レバノンに長期滞在するゴーンを兵糧攻めにするとして何がベストで何がベターなのか”を念頭にシミュレーションを行っているようです」

 例えば、

「捜査関係者の口が堅く、『ゴーンの家族』としかわかっていませんが、彼らがアメリカに滞在していたタイミングがあって、逮捕しようとしたことがありました。結果的にそれは果たせず、現在はすでにレバノン入りしているのですが、コロナ禍が落ち着けば『ゴーンの家族や周辺者』はレバノンを出て、日本と犯罪人引き渡し条約を結んでいる国にも入ってくる可能性が十分ある。当局はそこを狙っています」

ゴーンと突っ込んだ話ができる語学力

 警察庁担当記者にも聞いてみると、

「ゴーンの命運を握っているのはカネです。彼はブラジル、フランス、レバノンの国籍を持っていますが、例えばブラジルのダーティーな組織にも接触し、潤沢なカネを使うことで、捜査網が自分に迫ってこないように、迫ってくるなら早い段階で察知できるようにセキュリティネットを構築していることがわかってきました。これを裏返せば、カネが尽きたら、そういった組織も協力しなくなるということ。日本の捜査当局の協力者とならないまでも、ゴーンの逃亡を支えている仕組みが少しでもわかるかもしれませんから、カネの流れを詰まらせるのは大事なテーマになります」

 ゴーンは今回の逃亡劇について「映画化したいというハリウッドのプロデューサーがいる」と語っていたことがある。そういった「カネのなる木」に圧力をかけることもあるのだろう。

 捜査は世界を股にかけて行われているようだが、そればかりではない。

「もちろん、国内でも解くべき案件があります。それはゴーンがどうやって外部と交通・交信できたのかという点です。彼は特定のパソコンと携帯電話を、弁護士事務所でだけ使うことを許されていました。それが裁判所による保釈の条件です。ただ、それを守っているだけならあんな風に、それこそ映画になるような大逃亡劇は計画できるはずがない。捜査当局は、国内で逃亡に協力した人物がいることは間違いないと見ています」

 と、先の社会部デスク。

「それは例えば、ゴーンと突っ込んだ話ができる語学力の持ち主であったり、そもそも彼と頻繁に接触していても何ら怪しくない人物だったりということになるわけです。仮にそういった者がいるとするなら、今回逮捕されたグリーンベレー親子とも繋がっている可能性が高い。親子の逮捕容疑は微罪で、ゴーンからも高額のギャラがすでに支払われているでしょうし、仮に捜査や公判の間も黙秘し続けて日本を出国した暁にはボーナスというインセンティブ契約があるかもしれず、彼らが口を開くメリットは少ないかもしれませんが、特捜部はその“メリット”に賭けて必死に口説こうとするはずです。ゴーンはこの親子が特捜部に逮捕されないことを祈っていたと思いますが、とはいえ逮捕自体は折り込み済みだとされています」

 親子を挟んで、日本の当局とゴーンの綱引き、仁義なき戦いが始まったということになるだろうか。

デイリー新潮取材班

2021年3月2日掲載

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