厚労省と日本医師会の怠慢で「医療崩壊」は起きた…厚労省OBが指摘する本当の問題点

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国民のせい

 そして、木村さんは著書で、《この状況を見るかぎり、「このままでは全国で必要なすべての医療提供が立ち行かなくなる」という日本医師会会長の発言には、違和感しかありません》と批判する。

「緊急事態宣言を出したおかげで、飲食業や宿泊業などいろんな人たちが困窮しています。失業も倒産も増えて、就職ができなくなった人たちもいる。なのに、新型コロナの感染者が国内で初めて確認されてから1年も経つのに重症化対策への努力もせず、感染が拡大したのはまるで国民のせいとばかりに、行動制限を訴える厚労省と日本医師会には呆れるばかりです。

 日本医師会はすべての医師ががんばっていて、すべての医療機関が崩壊しているかのように語りますが、本当にがんばっているのは、正義感を持って誰もやりたくないコロナ対応にあたっている医療関係者です。その結果、ある都立病院では心身ともに疲弊したナースの多くが辞めてしまい、病棟閉鎖に追い込まれてしまったりしています。そうした現実があることを考えると、すべきだった対応をしてこなかった厚労省と日本医師会の罪は、本当に大きいと思っています」

 それでも日本は、まだ欧米に比べれば感染者も重症者も少ない。今から重症者に対応できる病院、病床、医療スタッフを用意しなければ、また感染が拡大したとき、同じように「医療崩壊」が叫ばれるだけだという。

「コロナウイルスも変異していきます。致死率は高くなくても感染が広がれば、重症化しやすい高齢者も増え医療をさらにひっ迫させるでしょう。医療キャパシティが上がるのは時間かかりそうなので、重症化しやすい高齢者のワクチン接種は急がないと再び緊急事態宣言となりかねません。厚労省は今までのような無策を継続しないで、能動的に政策を決定してもらいたいです。医系技官は単なる役人ではありません。公衆衛生のスペシャリストとして雇われているのですから」

 コロナ対策にもっとも必要なのは、厚労省と日本医師会の意識改革かもしれない。

デイリー新潮取材班

2021年3月2日掲載

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